鈴木の既読スキップ

なつかしゲームから最新ゲームまでアツく語る!

雑記:『ディスコエリジウム』早くクリアしろ問題/SF作家・伴名練との出会い

3月にブログを始めてからこれまで、特定の作品をとりあげた記事を中心に書いてきたのだが、たまにはこんな雑記もいいのではないかと思い、手を出してみる。

いつもは気合たっぷりの練りに練った文章を書いている(つもり)なのだが、まあ、この記事に関しては気楽に書くので、ゆるーいノリで読んで欲しい。

 

 

ゲームブログとは!?

さて、自分はゲームブログを運営しているにも関わらず、なんと8月25日よりこっち、『ディスコエリジウム ザ ファイナルカット』しかプレイしていない。

正真正銘、他のゲームを一切立ち上げていないのである。

秋はスクエニ新作ラッシュがあり、それも楽しみにしていたのだが、『ディスコエリジウム』にかかりきりでそれらもスルーしてしまった。

発売からかれこれ3ヶ月経っている。

いい加減クリアしろと自分にもツッコミを入れているのだが、なんとまだゲーム内の時間は2日目の夜である。(プレイした人にしかわからない話)

たぶんこれは、プレイするにあたっての意気込みがすごすぎるため、却ってプレイのハードルがあがっているという悪循環?に陥っている状況なのだと思う。

それに加えてすべての選択肢を見たいという思いが、プレイスピードをめちゃめちゃ遅くしているというのももちろんある。

いや、でも言っておきたい。

そういうプレイも楽しいのである!

ネットではすでに何周もプレイしたという人もちらほらいるのだが、その人達が『ディスコエリジウム』にかけている思いと、この超絶スローペースでプレイしている自分の作品への思いはそう変わらないんじゃないかと思っている。

どちらも『ディスコエリジウム』のことばかり考えているという点では同じなのだから。

 

とはいってもこの超ゆっくりなプレイスタイルには弊害があり、まだまだ序盤(たぶん)なのに、人の感想が読みたくてたまらずネットで検索をしまくるので、さっきなど、犯人を名指ししかねないつぶやきをTwitterで見かけてしまい慌ててブラウザを閉じるという一幕もあった。

ネットを見ないか、さっさとクリアするか、クリア者が続々登場していてネタバレの危険が漂い始めた今の状況ではどちらかを選択しないといけないところまで来ているのかもしれない。

まあ、今年中にはクリアしたい。

しかし、そういったジレンマを抱えてはいるが、実のところ自分の元にはゲーム業界以外からの刺客が現れてしまったのである。

 

 

SF作家・伴名練、20年に一度の運命の邂逅

大げさなあおり文句で紹介したが、伴名練(はんな れん)というSF小説家に自分はこの秋、出会ってしまった。

代表作は『なめらかな世界と、その敵』である。

2019年の年間SFベストを獲り、重版が何度も掛かったほどこの本は売れたのだそうだ。

数年前から人気沸騰の作家だというのに、自分はこのトレンドを一切知らず、かなり遅れて伴名氏の本を手にとった。

 

新しい作家にハマるのは何年ぶりか分からないくらいだ。

過去作をどんどん読んでデビュー作にたどりつくまでのこの一連の流れを久々に体験していて、正直、ものすごく楽しい。

ただ、伴名氏が本として出版しているのは『なめらかな世界と、その敵』とデビュー作『少女禁区』の2冊のみで、あとは雑誌掲載や他作家とのアンソロジーなどに収録されている短編のみである。

全体量としては少ない。

とにかく今現在は、それらをかき集めて伴名氏の作品を読み漁っている状態なのである。

たとえすべてを読み終えてしまったとしても、氏はアンソロジーの編者としても活躍しているため、氏がすすめる小説を読んでみて、そこに載せられた超長い解説を読むという手もある。

解説の中でも多くのSFを作品を紹介しているようだし、その中に読みたい本が出てくるかもしれない。

 

しかし自分には実はSFジャンルにおける野望がいくつかあって、そのうち一つは伊藤計劃(いとう けいかく)氏の小説を読むことなのである。

特に、『ハーモニー』という作品が気になっている。

そしてもうひとつは中国SF『三体』を読むことだ。

実際はどうなのか知らないが、この2つについては「名前はよく聞くが難しそうだから自分には読めなさそう」というイメージがあり、伴名練氏の作品でSFに慣れてきたら、えいやっとばかりに飛び込んでみたいと思っている。

 

 

そういったSFジャンルへの野望を抜きにして考えても、伴名氏の小説は面白い。

起承転結ならぬ起承転・転・転・転結くらい、読み進めていくうちにこういう話だろうと思い浮かべていたストーリーが何度も覆され、とにかくあっと驚かされることばかりだ。

ジャンルは違えど、自分は20年前に乙一氏の小説にあったときのことを懐かしく思い出した。

乙一氏はミステリ作家として有名かもしれないが、実際はさまざまなジャンルの小説を書いており、ジャンル:乙一とでも言いたいくらい分類不能であった。

途中から叙述トリックを封印したが、それがなくてもホラーやファンタジーで、「黒乙一」「白乙一」と呼ばれるダークだったり救いがある話を書いていた。

読者としてはめまぐるしく変わる作風をそういうものだと受け入れ、今度はどんな趣向で楽しませてくれるのだろうかとワクワクさせられたものだった。

 

乙一氏にハマった頃より20年の時を経て、伴名練氏に出会ったことには運命を感じる。

何が飛び出してくるのか分からないびっくり箱のような面白さをもった作品を出してくるというところが、ジャンルは違えど2人には共通していると思えるのだ。

そして伴名氏に出会うのは今でなければならなかったとも思う。

それは作品の持つジュブナイル感が、数年後の自分には届かなかった可能性もあるからだ。

自分はこのまま、伴名氏と同じ時代を生きていくことを嬉しく思っている。

氏はおそらくSF界でずっと活躍し続けるだろう。

それを見続け、そして氏が開いてくれたSFという世界の扉の向こうで、自分はこれまで手にも取らなかったような本に出会うだろう。

そのことが楽しみでならない。

 

 

ゲームだけではなく、本ブログでもあった

というわけで、伴名練氏の小説を読み終わるまで『ディスコエリジウム』をクリアしない可能性もあるのだ!

ゲームブログとしていかがなものか、と思う人もいるかも知れない。

驚きの事実を伝えたい。

この『鈴木の既読スキップ』は開設当時はゲーム&本ブログだったのである!

あまりにも本を読まなかったため、ゲームに特化していったが、ここ最近また読書に目覚めたからちょくちょく本の話題もとりあげるかもしれない。

どうか覚悟して欲しい。

 

 

さて、実はここまで書いてものすごく眠くなってきた。

書きたいことを書きまくったので今日はいい夢が見られそうである。

時にはまたこういった雑記を書いていくのも悪くない気がする。

 

もしこの記事が意外と面白かったという人は、不定期連載の次回を楽しみに待ってもらいたい。

『ディスコ エリジウム ザ ファイナル カット』プレイ日記 俺とお前と内陸帝国 Part5

即死イス

 

『ディスコ エリジウム ザ ファイナルカット』(スパイク・チュンソフト/PC/PS5/PS4/Switch/2022年)のプレイ日記Part5をお届けする。

 

 

それにしても、このゲームは面白い。

だがそれはジワジワ来る系の面白さであり、ゲーム冒頭からドカンとくるようなキャッチーなものではないとも思う。

プレイを進めて作品の舞台となるマルティネーズという街、そこで暮らす人々、そして主人公自身のことを知っていき、プレイヤーが頭の中で世界観を構築できて初めて、今起きているイベントが”面白い”ということが分かる、という作品なのではないかと感じている。

 

 

自分がこのゲームをプレイしている時の感覚としては、公式で言われている「RPG」よりは「ADV」に近い。

もっと言うと読書に近い。

とにかく文章量が半端ではない上、そこに込められている情報量もものすごい。

 

 

本作の舞台となっているのは架空の世界である。

そこには主人公が生まれる遥か前から続く長い歴史があり、それらに基づいて舞台となる”今日のマルティネーズ”という街が出来上がっている――ということが人々の話を聞いているうちに分かってくる。

しかし、知らない国の知らない歴史の話なので、一度聞いただけではよく理解できない。

頭に入るまで何度も読み返す。

また、自分は英語音声を最後まで聞いてからセリフを送っているので、文章を先に読んでしまってボイスが終わるのを待っているという場面もある。

そういう時にはもう一度文章を読む。

そんなことを繰り返しているうちに、ひたすら「読む」ことが多くなっていき、「ほぼ読書」のような状態になっている。

 

 

自分はアーキタイプ「神経質」でこれなので、「思想家」を選んでいて「百科事典」がしゃべりまくっていたらさらにゲーム進行がスローペースになっていただろう。

だが「百科事典」しか知りえない情報にも興味があるので、いつになるか分からないが2周目以降をプレイすることがあれば、ぜひ聞いてみたい。

 

 

 

前回のプレイ日記はこちら。

 

gameandbooknadonado.hatenablog.com

 

 

 

※なお、このプレイ日記ではネタバレも含むため、未プレイ・プレイ中の人は注意してほしい。

 

 

 

イスに座りたくない!

翌朝、ついに組合の長イヴラート・クレアと対面することになった。

コンテナを改造した部屋の中で彼は忙しくタイプライターを叩いており、こちらに気がつくと身を起こして頭の後ろで手を組んだ。

……偉そうである。

組合と対立するワイルド・パインズの交渉人ジョイスから、彼には気をつけろと言われていたのもあって、気を引き締めてイヴラートとの会話を始めた。

 

 

イヴラートは愛想よく主人公にイスに座るよう促してくる。

出た!!

自分はストーリーのネタバレを見ないように注意を払っているのだが、発売当初からあまりにも多くの人が言及していたので、このイスが「座ると死ぬ」ことは把握していた。

ダメージ床ならぬダメージイスなのだ。

 

 

そのため、イスに座るのを固辞して立ったまま話すことを希望した。

しかしイヴラートはそれでは申し訳ないなどとにこやかに言い、どうしても主人公をイスに座らせようとしてくる。

ネタは上がっているんだぞ!

などと刑事らしく言いたかったが、選択肢はどれもイスに座るほか無いものばかりだった。

 

 

しばらくイヴラートと睨み合った後、意を決して主人公をイスに座らせた。

即死――しなかった!

ホテルに泊まって全回復した後、朝一番でここへ来たため、少しくらいのダメージには耐えることができたのであった。

 

 

気を取り直してイヴラートとの会話を始める。

彼は主人公について、詳しく知っているかのように振る舞ってくる。

記憶喪失の主人公にとって、そしてプレイヤーにとってはぜひとも手に入れたい情報を、彼は把握しているとチラつかせてくるのだ。

スキルたちが冷静でいるようにと呼びかけてくるのを聞きながら、考え考え選択肢を選んでいく。

 

 

イヴラートは同時に、金もチラつかせてきた。

昨日の段階ならまだしも、キムのホイールキャップを質に入れて借金を返済した今となってはあまり意味を成さない行為だ。

金は受け取っていく方針だと以前書いたが、善意の金ならともかく、完全に見返りを求めてくるこの金は受け取れないと判断した。

そもそもまだ自分はワイルド・パインズと組合、どちらの肩を持つかハッキリ決めたわけではない。

この提案もはね退けると、イヴラートは主人公が無くした銃のことを持ち出した。

それは質屋で謎の女性が買っていったことまでこちらは摑んでいたが、その行方を探してやると彼は言い、とにかく何が何でもこちらに恩を着せようと画策しているようだった。

そうしないと話が進まないので協力を頼み、イヴラートと主人公は一時的にだとしても手を組むことになったのである。

 

 

そしてイヴラートは、メジャーヘッドに死体を下ろす手伝いをするよう、命令を下した。

 

 

それにしてもこのイヴラート・クレアという男――面白い。

俗物で、胡散臭くて、小面憎くて、明らかに悪役として登場してきて、あらゆる手で主人公を絡め取ろうとしてくる。

それに抗う主人公との間に散る見えない火花!

このシーン、できることなら実写で観てみたいくらいワクワクした。

 

 

さて、全然話が進んでいないが、今回はここまでにしておこう。

とにかくずっと即死イスの話がしたかったので、目的は達せられた。

いよいよ死体を下ろした後、なんと、犯人が判明する――!?

 

 

 

次回、俺とお前と内陸帝国Part6へ続く

 

『ディスコ エリジウム ザ ファイナル カット』プレイ日記 俺とお前と内陸帝国 Part4

リアルでもホイールキャップにハマる人は多いようだ



『ディスコ エリジウムファイナルカット』(スパイク・チュンソフト/PC/PS5/PS4/Switch/2022年)のプレイ日記Part4をお届けする。

前回からかなり期間が空いてしまったので、ストーリーも結構進行している。

語りたいことも山ほどあるのだが、それを全部書いたらとんでもない長さになってしまうため、自分にとっての印象的なイベントを中心にこれまでのプレイを振り返っていきたい。

ちなみに自分はSwitch版を遊んでおり、アーキタイプは「神経質」である。

 

 

 

※なお、このプレイ日記ではネタバレも含むため、未プレイ・プレイ中の人は注意してほしい。

 

 

 

前回のプレイ日記はこちら。

 

gameandbooknadonado.hatenablog.com

 

 

一気に借金返済

前回ジャーヘッドを蹴り倒し、これで物語が進行すると喜んだが、そこから死体を下ろすまでにはまだ様々なイベントがあった。

まず、組合の長イヴラート・クレアを訪れたが、時間が遅すぎたため彼はすでに帰宅してしまっており、翌日また出直す必要が生じてしまった。

 

 

相棒の刑事キム・キツラギも勤務時間が終わったのでそろそろ帰ると言い出した。

キムが立ち去るのを待っていたが、なかなか動こうとしないので主人公が移動するとそれまで通り後ろを追いかけてくる。

ゲームシステム的になんらかのタイミングでないと、パーティーから離脱できないようだ。

そうこうしているうちに時刻は23:00を回っていた。

キムの姿を見ながら、

残業

というリアルな二文字が自分の脳裏によぎった。

RCMで残業手当がきちんと払われていることを祈りたい。

 

 

ホテルに戻ったが、130リァルを超す借金を返せる見込みなど当然なく、恐れていた野宿をする羽目になるのかと思ったその時、キムが妙案を思いついたようだった。

外へ出て内燃四輪車へ向かうと、積んであったホイールキャップを指し示して、それを質屋に持っていこうと提案してきた。

以前連行した金持ちが所有していたものを押収し、ずっと保管していた、と説明するキムの口調はいつになく歯切れが悪い。

どうやら彼はRCMの規則に反することは理解しつつも、このホイールキャップを私物化したいと思っていたらしかった。

 

 

質屋ではこのホイールキャップを200リァル近い大金で質入れすることができ、一気に借金を返せることになった。

どれだけ高級な品だったのだろうか。

必要な金額を主人公に渡すと、キムは残りを懐にしまいこんだ。

あらためて考えると、2人で証拠品の横流しを堂々とやってのけたわけだ。

……いいのか?

これが後々のストーリーに関わってくる可能性を考えると少々不安にも思うが、どう考えても130リァルもの借金は正攻法では到底返済できそうにない。

とりあえずよしとしよう。

 

 

そしてこの質屋では無くなった主人公の銃についての情報を得ることができた。

記憶を失う前夜、主人公は尋常でない様相で店に駆け込んできて、自分の銃を質入れしようとした。

銃は扱っていないと断る店主に対して、自殺の真似事までして強引に自分の銃を引取らせたのだという。

その値段、15リァル。格安だ。

いかに店主が引き取りたくなかったのか分かる値段である。

しかもその銃は、謎の女性がすでに買い取ってしまい、再び行方知れずとなっていた。

 

 

 

主人公の悪行

記憶を失う以前の主人公の異常な行動については、別ルートでも情報が得られた。

それは、ホテルの元従業員シルヴィアの証言である。

”吊るされた男”のことをRCMに通報した彼女に無線を繋いだところ、事件のことよりも主人公がホテルでやらかした横暴な振る舞いの数々について詳しく知るところになった。

 

 

それによれば、主人公は「俺が法だ!」と喚き立て、客にしつこく絡んだり、ホテルの皆が大事にしていた鳥の剥製を壊したり、銃をちらつかせた挙げ句それで自殺の真似事までしたようだ。

シルヴィアがホテルを辞めたのも、主人公の言動に耐えかねてのことだったのだという。

ひたすら「面目ない」というセリフを繰り返すことになってしまった。

 

 

それにしても、この情報は結構ショックだった。

なぜなら、ここで明かされた事実が、自分の想定していたよりも数段ヒドかったからである。

もう少し悲哀に満ちているのかと思ったが、実際は、はた迷惑で悪い意味でアグレッシブだった。

思い描いていたロールプレイが揺らぎそうなほどであった。

 

 

他人と過去は変えられない――有名なその言葉を実感する。

同時に、自分と未来は変えられる――という続きも思い出す。

RCMの医師”ラザレス”と無線で話した際、記憶を失くしたと言う主人公に、「それなら生まれ変わったつもりになればいい」と彼は言った。

”ラザレス”は主人公に対して終始投げやりな態度であったため、この言葉も親切心から出たというわけではなさそうだが、聞いた時に一瞬ハッとさせられた。

どん底から這い上がる主人公というロールプレイを思い描いてここまでゲームを続けてきたが、そこには辛かった過去を思い出し、それを乗り越えてかつての輝きを取り戻すと言った筋書きを当てはめていた。

過去と完全に決別するという考えはなかったため、”ラザレス”のこの言葉がなんらかの伏線なのか、それともただの雑な返しなのか、今後の展開で明らかになるのを待ちたい。

 

 

余談だがこの”ラザレス”、飴を盛大に噛み砕きながら無線に出るのだが、それだけで彼のガサツさがプレイヤーに伝わってくる。

ディティールの凝り具合に感心したシーンだった。

 

 

 

長い一日の終りに

さて、ホイールキャップを質入れしたおかげでホテルで借金を返済し、今夜の宿代も支払うことができた。

キムは自宅に帰るのかと思っていたが、ホテルに部屋を取るようである。

インタラクトできるのが謎だった主人公の隣の部屋に泊まるようだ。

2人は部屋の前で別れるのかと思いきや、キムは今日一日の捜査の結果を話し合うためにバルコニーに出ようと言う。

 

 

時刻は午前零時を回っていた。

外は連日氷点下を記録するほどの寒さだとゲーム中幾度も耳にした。

そんな中バルコニーで話す必要があるのだろうか……と正直思ったが、キムがタバコに火をつけた時にそのためかと納得した。

「電気化学」がタバコを吸うキムがクールだ!と騒ぎ出す。

キムは一日の終りに一服しながらその日の捜査を振り返る習慣があるのだという。

タバコをもらうという選択肢もあり、2人で吸っていた方が絵になるとは思ったのだが、ロールプレイの方針として吸わないと決めていたので、断念した。

 

 

青い手帳を開いて進捗を確かめる彼の表情は昼間よりも柔らかく、驚いたことに笑みさえ浮かべてみせた。

一つ一つ捜査の状況を整理し、明日の予定まで確認し終えると、2人は黙ってマルティネーズの街の灯を見つめた。

キムのタバコの煙がゆっくりと立ち上り、降り始めた雪の中に消えていく。

 

 

その光景を見守りながら、自分は確信した。

この先の展開がどうなろうと、たとえエンディングが望むものにならなかったとしても、この一瞬だけでこの『ディスコ エリジウム ザ ファイナル カット』は自分の中で名作足りうると。

 

 

もしかするとバルコニーで一日を振り返るというのはクリアするまで毎晩続く恒例のイベントに過ぎないのかもしれない。

だが、いわばビジネス関係で出会ったばかりの2人が長い一日を共にする中で、お互いのことが少しずつ分かってきて打ち解け始めたというこの距離感が醸し出す雰囲気は初日にしか味わえないだろう。

くたびれかけた中年男2人が並んでいる渋い絵面も、自分が今までプレイしてきたゲームではあまり見かけないものだったが、これまで観てきた洋画や洋ドラの中で何度も目にしてきたような気がしてくる、どこかノスタルジックな空気感が漂うものだった。

 

 

また、本当かは分からないが、本作の天候はランダムだと聞いた。

ここで2人の沈黙を埋めるように雪が降ったのが偶然だとすると、相当粋なタイミングで天候が切り替わったとしか言いようがない。

 

 

 

最後に

とてつもない文章量で知られる本作は、一回のプレイで入ってくる情報量が非常に多い。

自分はロード無しで選べる選択肢はすべて試していくプレイをしているので、毎回大量の文章と向き合うことになっている。

そのため気力・体力・時間がすべて揃ったタイミングでプレイしようとしており、進行がひどくゆっくりになっているのだ。

もちろん、ストーリーの先が見たい、エンディングがどうなるのか知りたいという気持ちはある。

だが、自分は特にストーリーもののゲームはやはり先の展開を知らない一周目が一番面白い気がするのだ。

この『ディスコ エリジウム ザ ファイナル カット』の貴重な初見プレイを、後悔しないようにじっくりと進めていきたいと思っている。

どうか気長に付き合ってもらいたい。

 

 

 

次回、俺とお前と内陸帝国Part5へ続く

 

gameandbooknadonado.hatenablog.com

 

 

青春時間SFミステリ『新装版タイム・リープ あしたはきのう』を買うために、自分は本屋へ走り出した

この本を読む時、脳細胞が活動し始める手応えを感じる

 

Twitterを見て走り出す

Twitterで紹介されていた本のタイトルを見て、自分は急いで身支度を始めた。

本屋へと出かけるためだ。

それも自分の行動範囲で一番大きな本屋へとである。

10月25日に発売されたばかりの新刊なので、それなりの規模の書店なら店頭に並んでいる可能性は高い。

 

 

もちろんネット書店に在庫があることは確認済みだ。

しかし、宅配を待っているような心の余裕はなかった。

今すぐ読みたいのだ。

高畑京一郎先生の『新装版タイム・リープ〈上〉〈下〉 あしたはきのう』(メディアワークス文庫を。

この本を手に入れるため、あらゆる手段を講じる心づもりだった。

 

 

 

『新装版』とは?

書名に『新装版』とあるが、ただ単にカバーイラストを変えただけではなく、1996年に電撃文庫から刊行された作品に加筆・修正されたものが本作にあたる。

そして下巻の巻末には「『タイム・リープ』の思い出」という新規書き下ろしの高畑先生のコメントが収録されている。

 

 

自分は『タイム・リープ』が文庫化されるよりも前、1995年にメディアワークスから出たハードカバー版を愛読しており、今でも数年おきに読み返しているため、内容はほぼ頭に入っている。

セリフなどは暗記レベルで把握していると言ってもいいだろう。

そのため自分が本屋へ走ったのは主に加筆・修正および新規書き下ろし部分を読みたいがためであった。

自分ならどの部分が加筆・修正されているのかオリジナル版と見比べるまでもなく絶対に分かるはずだという自負心を胸に抱いていた。

 

 

 

紹介記事あります!

ところで本ブログ『鈴木の既読スキップ』は基本的にはゲームブログとして運営している。

だが、はてなブログ公式から出る「お題」のテーマが「SFといえば」なのを見た瞬間、あらゆるゲーム作品を差し置いてこの『タイム・リープ』を紹介してしまったことがある。

あらためて読み返すと、ネタバレを避けつつ上手くあらすじを紹介できているので、本作についてのおおまかな情報を知りたいという人はこちらに目を通してもらいたい。

 

gameandbooknadonado.hatenablog.com

 

 

無事GET

さて、幸運なことに一軒目の本屋で『新装版タイム・リープ〈上〉〈下〉 あしたはきのう』を無事手に入れることができた。

ちなみにメディアワークス文庫の本を買ったのは初めてであったため、売り場が分からず店員さんに尋ねるという一幕もあった。

会計を済ませた自分は、大きな本屋を目指してはるばるやって来たにも関わらず、即、帰路についた。

とにかくゆっくりと家で加筆・修正および新規書き下ろし部分を堪能したいという一心であった。

 

 

 

オリジナル版との違い

そこで自分がどのようにして『新装版 タイム・リープ』のオリジナル版との違いを見つけていったのかというと、初めから終わりまで普通に読んだ。

何回読んでも色褪せないその面白さに感嘆しながら、まずはいち読者として『タイム・リープ』という物語を楽しんだ。

 

 

飛ばし読みもせず、一行一行噛みしめながら読んだため、よほど細かい部分でなければ加筆・修正がどこであるかにもほぼ気づけたと思う。

 

 

ストーリーがガラッと変わるということはない。

例えば水曜日の保健室のシーンはセリフや描写がかなり加筆されていたが、それは状況を分かりやすくするためという意図からなされたものだと思われた。

他の部分でもセリフの語尾が変わっていたり、はたまたセリフ自体が置き換わっていたり、状況説明が書き足されていることに気づくことができた。

いずれにしても読者に対しての親切さから、あるいは作品が書かれた1995年と現代との価値観の変化に合わせてなされた絶妙なさじ加減での加筆・修正であった。

 

 

自分はオリジナルとの違いを見つける度にテンションが上ってしまい、繰り返し繰り返しその部分を読み返して一旦中断してしまうので、読み終わるまでに思った以上の時間がかかってしまった。

 

 

 

一瞬ウルっと来た

もちろん、書き下ろしの「『タイム・リープ』の思い出」も最後に読んだ。

もしかするとこれは自分が”ケーキのイチゴを最後まで取って置く派”なのも関係しているかも知れない。

 

 

正直、完全書き下ろしのこの部分を読んでいる時、手が震えてしまった。

高畑先生の新しい文章が読めるという事実だけでも十分気持ちが高ぶるというのに、さらにそこに書かれていることが、27年の時を経て明かされる『タイム・リープ』の執筆に関する貴重なエピソードだとなれば、冷静で居ろという方が無理な話である。

正直自分がどんな表情をしていたのか分からないので、カフェなどではなく家で読んでいて良かったと思わざるを得ない。

 

 

最後に

まだ『タイム・リープ』を読んだことのない人が新装版をきっかけに、この美しいほどに練り上げられた”青春時間SFミステリ”の面白さを体感する――それを思い浮かべるだけで、長年ファンを続けてきた身としては喜ばしい限りである。

以前読んだことがあるという人も、あらためて本作を手に取ればその魅力を再認識するだろう。

 

どういったきっかけで『新装版タイム・リープ』が発売されるに至ったのかは分からないが、この企画を立ち上げてくれた方々にお礼を言いたい。

2022年に『タイム・リープ』を本屋へと買いに走ることも、高畑京一郎先生の新しい文章を読むことも、正直、予想だにしていなかった。

Twitterで発売を知ってから最後の一ページを読み終えるまで、半ば夢の中にいるようだった。

夢から抜け出て書いているこの記事を見て、一人でも『タイム・リープ』を読もうと思ってくれた人が居てくれたら、こんなに嬉しいことはない。

 

勝手に大予想!「ゲームゲノム」に今後登場しそうなゲーム3選

お気に入りのゲームが来ることを願おう


毎週水曜日23:00~絶賛放送中のNHK総合「ゲームゲノム」。

ゲームを文化・作品として掘り下げる教養番組である。

 

 

自分も毎週、リアルタイムで視聴してそのあとTwitterで感想を検索するまでをセットで楽しんでいる。

これまで第3回までが放送されており、それぞれ取り上げられた作品としては、

 

第1回『ワンダと巨像』『人喰いの大鷲トリコ』

第2回『ペルソナ5』

第3回『逆転裁判

 

があり、第4回は『ダークソウル』が紹介されるとアナウンスされている。

 

 

ちなみに以前書いた第1回の感想はこちらである。

 

gameandbooknadonado.hatenablog.com

 

第5回以降はまだどの作品が取り上げられるのかが明かされていないため、せっかくなのでこれまでの放送を振り返りつつ、勝手にあれこれ今後紹介されるゲームについて想像を巡らせて楽しんでみたいと思う。

 

 

まずはこれまでの放送を分析して、どういった作品が紹介されるのかを考えてみた。

 

 

1.名作だと一定の評判がある

2.現行機(PS4/PS5/Switch/Xbox/PC)で遊べる

3.ジャンルが分散している

4.ストーリー性がある

5.他作品との差別化がなされている

 

 

まず、

1.名作だと一定の評判があるだが、第4回までの紹介作品は、少なくともゲームプレイヤーの中ではそれなりに知名度がある作品ばかりである。

 

 

そして、

2.現行機(PS4/PS5/Switch/Xbox/PC)で遊べるだが、これは紹介された作品に興味を持った視聴者が、すぐプレイすることができるように考慮されているのではないかと思う。

 

ゲームプレイヤーのみならず、これまでゲームに触れたことがなかったり、しばらく離れていた人たちも番組を観ているだろう。

そんなに面白いならやってみるかと思った時、今ではもう遊べない過去のハードのゲームだと分かったら、せっかく抱いたゲームそのものに対しての興味を削がれてしまうだろう。

 

自分は第1回で『ICO』がメインで紹介されなかったのはそれが理由だと思っている。『ICO』は元々PS2のゲームで、PS3でHDリマスターが発売されている。

現行機であるPS4/PS5で遊ぶにはPSPlusプレミアムというサービスに加入する必要があり、新たに遊ぼうとする人にとってはかなりハードルが高い。

 

 

3.ジャンルが分散しているだが、ジャンルの区分については人によって異なると思うが、おおまかに言えば『ワンダと巨像』『人喰いの大鷲トリコ』はアクション・アドベンチャー、『ペルソナ5』はRPG、『逆転裁判』はアドベンチャー、そして第4回『ダークソウル』はアクションRPGである。

 

そのため、これから紹介される作品も、バラバラのジャンルである可能性が高いのではないかと予想している。

 

とはいえ、ジャンルをまたいだ複数の要素を持った作品もあるし、

4.ストーリー性があるという点を考えてみると、ある程度範囲は狭まってくるかもしれない。

第3回までの作品に関しては、ストーリーを軸に作品について語る傾向があった。

自分は第4回『ダークソウル』については未プレイのため、どんな物語がどのように語られるのか予想がつかない。

そのためストーリー「性」という言い方に留めておいた。

 

ゲームプレイを通して、何らかのドラマがそこに発生する作品であれば、そこに語るべきテーマが生まれるのではないかと予想している。

 

 

5.他作品との差別化がなされているについてだが、『ワンダと巨像』では巨大なボスによじのぼって倒すという要素のみでゲームを構成したこと、『人喰いの大鷲トリコ』ではAIではあるが、まるで生きているかのようにリアルな存在感を放つ架空の動物トリコを生み出したことなどが挙げられるだろう。

 

申し訳ないが『ペルソナ5』は未プレイなので、番組内で紹介された内容しか分からず、詳しく語ることができないため割愛させてもらう。

 

逆転裁判』は従来のミステリアドベンチャーゲームを「裁判」というゲームではあまり馴染みのない独自の切り口で、しかも誰にでも受け入れやすく、楽しむことができる形で表現したことが、なにより革新的な部分なのではないかと考えた。

(ちなみに自分は『逆転裁判1~4』『逆転検事』をクリアしている)

 

 

 

さて、これらの点を踏まえて、自分が今後紹介されるのではないかと予想するゲームは、

 

1.『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』

2.『Ghost of Tsushima』

3.『あつまれ どうぶつの森

 

である。

いずれもクリア済みの作品となる。

 

 

1.『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』(Switch/Wii U/2017年)

ほぼすべてのゲームプレイヤーが知っている作品だろう。

名作であることは疑いようもなく、ジャンルとしてはアクション・アドベンチャー

オープンワールド(正確にはオープンエア)作品は番組ではまだ紹介されていない。

 

どこまでも広がるハイラルの大地を駆け、パラセールで滑空し、山を登る……そのことに数多くのゲームプレイヤーが夢中になった。

自分も過去に本作で一番印象に残った場面について語ったことがある。

実はこの記事は自分でも結構お気に入りである。

ぜひ読んでみてもらいたい。

 

gameandbooknadonado.hatenablog.com

 

「ウツシエ」で蘇るゼルダ姫や英傑たちとの思い出、各地に残るかつての戦の跡など、ストーリーについても語るべきことは十分あるだろう。

フィールドは拠点を繋ぐだけの空間ではなく、歩くだけであらゆる発見がある、プレイヤーにとって常に刺激的な遊び場だった。

 

本作をプレイした人ならば肌感覚で分かるこの作品独自の魅力を、ぜひ「ゲームゲノム

言語化してもらいたい。

 

 

2.『Ghost of Tsushima』(PS4/PS5/2020年)

アメリカのゲーム会社サッカーパンチが制作した、日本史でもおなじみの「元寇」を描いた鎌倉時代対馬を舞台とした侍が主人公のゲーム。

なぜこの作品が制作されたのかを語るだけでも十分ドラマティックで、話題に事欠かないだろう。

 

そして侍である主人公が、目的のために誉れを捨てた冥人(くろうど)へと変わっていく中で味わう苦悩など、ストーリー性という点でも語るべきことは大いにある。

 

あとはこの「ゲームゲノム」が”NHK”で制作されるという点に注目してみると、舞台となった対馬元寇についての映像資料が充実していそうなため、それを活用できるタイトルとして選ばれる可能性もあるかもしれない。

 

日本の美しい四季の風景が描かれた世界を鎧装束に身を包み馬にまたがって駆ける。

神社を参拝し、和歌を詠む。

映画監督黒澤明の作品をイメージした白黒の通称”クロサワモード”まで搭載した本作には、ありったけの日本文化への愛情が込められている。

ぜひとも「ゲームゲノム」で紹介してもらいたい一作だ。

 

 

3.『あつまれ どうぶつの森』(Switch/2020年)

あらためて考えると『どうぶつの森』シリーズをジャンルとしてなんと呼べばいいのか分からない。

スローライフ?生活シミュレーション?

言えるのは、本作が極めて特殊なゲームであるという点だ。

木を揺らして果実を取り、魚を釣り、好きな服に着替え、部屋の中にお気に入りの家具を並べる。

一つ一つの要素をとって見れば、他のゲームにもミニゲームとして登場するかも知れないものだが、それをすべて集結させ、それだけでひとつの作品として世に送り出されたのが『どうぶつの森』なのだ。

しかもこれらのゲーム内アクションは直感的な操作で遊ぶことができ、普段ゲームをしないような層でも気軽に手に取れる作品であるというのも魅力のひとつだろう。

 

そしてなによりカラフルでポップな色彩で描かれる本作の世界は、ひたすらほのぼのしており、ちょうど本作が発売された時期、パンデミックに沈んでいた気分を晴れやかに吹き飛ばしてくれるほどのパワーを放っていた。

現実の世界でなにがあっても、星型のマークを地面に見つければ、思わずスコップを手に駆け寄る。

掘り返した化石を手にすれば、それだけで幸せな気分になることができたのだ。

 

そしてオンラインで世界中の人とつながることができた点も大きい。

リアルではなかなか会えない友人たちと一緒に遊んだり、他のプレイヤーの島を訪問して自分の島との違いに驚いてレイアウトの参考にしたり、アイテムを交換するためにプレイヤー同士交流したり、楽しみ方は無限大であったと言えるだろう。

 

無人島を発展させるという最終的な目標は一応設定されているため、そこに至るまでのプレイヤーたちの試行錯誤をストーリー性として描くこともできるかもしれないが、むしろ先に上げたような世の中の状況とからめた方がより鮮明に『あつまれ どうぶつの森』の放った輝きについて語ることができるかもしれない。

 

 

番外編

プレイしていないが、これも「ゲームゲノム」で紹介されそうだと思う作品を挙げてみると、

・『UNDERTALE』

・『天穂のサクナヒメ』

・『Detroit Become Human』

などがある。

いずれも話題になったり、プレイ済みの人から評判の高い作品である。

これらの作品について、その魅力を「ゲームゲノム」でどのように紹介するのか、ぜひ観てみたい。

 

 

また、紹介される可能性は低いが、取り上げられたらうれしいと思う作品としては、

・『十三機兵防衛圏』

・『シェンムー

などがある。

それぞれ紹介記事を書いたことがあるので、よければ読んでみて欲しい。

 

gameandbooknadonado.hatenablog.com

 

gameandbooknadonado.hatenablog.com

 

さて、それでは予想タイムはこのくらいにして、まずは来週の『ダークソウル』回を楽しみに待ちたい。

自分はいわゆる「死にゲー」をプレイしたことはないのだが、もしかすると、これを機に手を伸ばしてみたくなるかもしれない。

 

「ゲームゲノム」という番組が、自分にとって水曜日を待ち遠しくて仕方ないものにしてくれた。

全10回、各30分と言わず、ずっと続けていってもらいたいと心から思う。

 

 

NHK新番組「ゲームゲノム」第1回『ワンダと巨像』『人喰いの大鷲トリコ』感想

老若男女にゲームを文化として紹介する番組

 

10月5日よりNHK総合で新番組「ゲームゲノム」が始まった。

毎週水曜日23:00~23:30の放送となっている。

 

 

ゲームを文化として捉え、ソフトを作品として扱う教養番組であり、第1回はゲームクリエイター上田文人氏と俳優の山田孝之氏をゲストとして招いて『ワンダと巨像』『人喰いの大鷲トリコ』両作を「孤独と生命」という切り口のテーマで語った。

 

 

番組は、ゲーム映像を使ったゲーム紹介とテーマ「孤独と生命」の解説、MCの本田翼氏・ゲストの山田孝之氏のプレイ風景、上田文人氏を交えての3人でのスタジオトークなどを中心に構成されており、合計30分だったとは思えないほど中身が詰まっていて、個人的には見ごたえがあった。

 

 

第1回を6回も視聴した理由

自分はリアルタイム視聴した上、録画を5回ほど見返している。

それだけ観ればもう十分ではないかと思うかもしれないが、見直す度に新しい発見があるので、おそらくこの先も何度でも視聴するだろう。

 

 

とはいえ自分は特段「テレビ好き」というわけではない。

これだけ繰り返し観ているのは、今回取り上げられた『ワンダと巨像』『人喰いの大鷲トリコ』、そして番組内でも紹介された『ICO』を含む3作を、自分がクリア済かつそれぞれに深い思い入れがあるからだ。

特に『人喰いの大鷲トリコ』は人生のBESTゲームを選ぶとしたら5本の指に入るほどの名作だと思っている。

そして、これらの作品を生み出した上田文人氏は、自分がもっとも好きなゲームクリエイターなのだ。

 

 

自分にとって大切なゲームが、「あの」NHK総合で、全国の幅広い視聴者に向けて大々的に紹介される。

そのことだけでも十分喜ばしいのに、番組内容も非常に充実したものだったとなれば、いちファンとしては何度でも見返したくもなるのである。

 

 

上田文人氏の作品を推していきたい

このブログでも以前『ICO』を紹介したことがある。

 

gameandbooknadonado.hatenablog.com

 

この記事を書いた時、プレイ中のことを思い出すだけで高ぶる自分の感情をどう表現したらいいのか、どうやったら未プレイの人にこの作品の魅力を分かってもらえるのかとても苦心した記憶がある。

 

 

上田文人氏の3作品についてはすべて紹介するつもりでいたため、ブログを開設してこの半年の間、『ワンダと巨像』『人喰いの大鷲トリコ』の記事も何回も書きかけていた。

だがあまりに思い入れが深すぎて、どういった切り口で語ったらいいのか悩み、試行錯誤しているうちに今日まで来てしまったのである。

今回「ゲームゲノム」ではこの2作を「孤独と生命」というテーマで語っていたが、自分もこの番組をふまえつつ、オリジナルの解釈を加えてあらためて記事を書きあげたいと思う。

 

 

番組の視聴者層について

さて、この「ゲームゲノム」の視聴者はおおよそ次の4つに分けられるだろう。

 

 

1.ゲームをプレイ済み

2.プレイしてないが作品の存在は知っていた

3.作品自体知らなかった

4.そもそもゲーム自体にあまり馴染みがなく、教養番組として観た

 

 

第1回においては自分は「1.ゲームをプレイ済み」の立場である。

そのためこの「ゲームゲノム」が「4.そもそもゲーム自体にあまり馴染みがなく、教養番組として観た」というまったく前提知識がない層に向けてどのように『ワンダと巨像』『人喰いの大鷲トリコ』を紹介し、その魅力を語るのかという点でも興味深く視聴した。

 

 

”ネタバレ”に踏み込んだ放送内容

「孤独と生命」というテーマを語る上で、『ワンダと巨像』におけるとある巨像の攻略法や、『人喰いの大鷲トリコ』の終盤の名シーンなどが紹介された時には、ここまで見せてしまうのかと少々驚いたが、「ゲームゲノム」はゲームの販促番組ではないということを考えれば納得がいく。

 

 

番組の狙いは視聴者にゲームをプレイしてもらうことではなく、文化としてゲームを語ることである。

あくまで教養番組として「ゲームゲノム」を観る人たちに対して、この第1回の放送の中で最大限作品の魅力と核心に迫りつつすべてを完結させなければいけない。

そして数あるゲームの中からなぜその作品を取り上げたのか、他のゲームとなにが違うのかを視聴者に説明するためには、具体的なシーンを使っての説明が不可欠となるのだろう。

 

 

そもそも、普段ゲームで遊ぶという層でも『ワンダと巨像』『人喰いの大鷲トリコ』については、「2.プレイしてないが作品の存在は知っていた」「3.作品自体知らなかった」という人が多いのではないかと思っている。

番組を観た人なら分かると思うが、『ICO』を含めたこれらの作品は従来のゲームとはかなり異なる方向性を持っており、口コミで大ヒットするようなジャンルのものではない。

この「ゲームゲノム」でこれらのゲームの詳細を初めて知った人もたくさんいるはずだ。

 

 

プレイ意欲を刺激する”チラ見せ”

ふと以前どこかで読んだ、映画の予告編を作る際に、近年では一番いいシーンを惜しげもなく使うことが多くなっているという話を思い出した。

映画を観てもらうためには、まずはその作品のターゲットとなる人々の興味を引きつける必要がある。

クライマックスのシーンをあえて見せることによって、面白そう、その場面が見たいという気持ちを掻き立てて映画館に足を運んでもらう――そんな内容だったと記憶している。

 

 

例えば「ゲーム史に残る名場面」として紹介された『人喰いの大鷲トリコ』の映像は、ゲストの山田氏の言葉を借りるとすれば「友情が恐怖を上回った」ことを物語る感動的な場面である。

このシーンを取り上げたことで、視聴者に対して、このゲームが「少年とトリコの絆を描いた作品」であることがより強く印象づけられたと思われる。

そういった作品が好きなゲームプレイヤーは、これを機に『人喰いの大鷲トリコ』を遊んでみようと考えたかもしれない。

 

 

先ほどの映画の予告編と同じく、作品のターゲットなる人々に「自分が好きそうな作品だ」と思ってもらうことが第一歩なのだとすれば、この「ゲームゲノム」は販促を目的とした番組ではないが、受け取る側の立場によっては十分に販促たりうるのだと捉えることもできる。

 

 

一人でも多くの人にプレイして欲しい名作

自分はもちろん、『ワンダと巨像』『人喰いの大鷲トリコ』そして『ICO』が大好きなため、プレイヤーが一人でも増えて欲しいし、プレイしてこそ分かる番組内だけでは伝わりきらなかった作品の魅力をその人たちに知ってほしいと思っている。

あらためて、ゲームを文化として取り上げる「ゲームゲノム」第1回でこれらの作品を紹介してくれたことをとてもありがたく感じている。

 

 

ちなみに『ワンダと巨像』『人喰いの大鷲トリコ』は、PlayStation専用ソフトであり、現在PS4/PS5で遊ぶことができる作品となっている。

10月12日まで2作品のValue Selectionのダウンロード版がそれぞれ半額になっているようなので、気になっている人はぜひチェックしてみて欲しい。

 

 

次回以降の放送について

「ゲームゲノム」第1回を見逃してしまった人は一週間なら「NHKプラス」で見逃し配信をしているため、そちらもぜひ検討してみてもらいたい。

 

 

第2回は『ペルソナ5』だが、自分はこの作品は未プレイであり、おおまかな設定は知っているが、詳しいことはほとんど分からない。

そのためまずゲーム紹介の時点から楽しみにしている。

 

 

そして、プレイしていない分「ゲームゲノム」という番組をフラットな視点で観ることができるため、自分にとってこのTVシリーズがどういう位置づけになるのか、次回で明らかになるだろう。

全10回の放送を予定しているとのことで、現在公開されている紹介作品としては『逆転裁判』『ダークソウル』などがある。

今後どんなゲームが取り上げられるのか、続報にも期待したい。

 

『ディスコ エリジウム ザ ファイナル カット』プレイ日記 俺とお前と内陸帝国 Part3

『ディスコ エリジウム ザ ファイナルカット』(スパイク・チュンソフト/PS5/PS4/Switch/2022年)のプレイ日記Part3をお届けする。

 

 

本作が発売されて約一ヶ月が経ったが、大変スローペースでプレイしているためまだクリアはしていない。

しかしゲームを遊んでいない時もプレイ日記をどう書こうか常に考え続けているため、この一ヶ月間ずっと『ディスコ エリジウム ザ ファイナルカット』のことが頭にあった。

印象的なシーンは繰り返し思い浮かべることでさらに強烈に心に刻まれていき、一方で、これからの展開を何通りも思い描くことでこの先のプレイへの期待感は増している。

 

 

海外での高評価を受けて日本語化をずっと楽しみに待っていた本作であるが、正直、寒々しく薄汚れたマルティネーズの街を、酔っぱらいで記憶喪失の中年刑事になってさまようことがここまで面白いとは思ってもみなかった。

本作のパッケージには「政治的イデオロギー」や「ハードボイルドでハードコア」など日本のゲームではあまり見かけないフレーズが躍り、24の人格の「脳内パーティー」などの設定も難解に感じる人が多いかもしれない。

だが、自分はこの作品を「落ちぶれた主人公が再起をかけて相棒とともに殺人事件の謎に挑むストーリーのゲーム」だと解釈したことで、本作をシンプルに受け止められるようになり、その楽しさが分かってきた。

 

 

もしこの記事を読んでいて、難しそうだという理由で『ディスコ エリジウム ザ ファイナルカット』に手を出しかねている人がいたら、そこまで心配はいらないと言いたい。

莫大な文章量に対する覚悟が出来ているならば、他にもう怖いものはないだろう。

 

 

前回のプレイ日記はこちら。

 

gameandbooknadonado.hatenablog.com

 

 

※なお、このプレイ日記ではネタバレも含むため、未プレイ・プレイ中の人は注意してほしい。

 

 

 

 

41分署の面々との”洋画っぽい”会話

キムと共に事件現場を検分した主人公は、資金援助や身分証の紛失を報告するために所属している41分署と無線通信を試みる。

 

 

ここでは直接会話するのではなく、通称”オールドボーイ”と呼ばれる年配の通信士を介して伝言ゲームのようなやりとりが交わされる。

結果として主人公の要望はすべてはねのけられ、言われたい放題で散々な結果に終わるのだが、ここでの同僚たちとの会話がとても”洋画あるある”なので、荒くれ男たちが出てくるような作品が好きな人は特に必見である。

 

 

言い争いの板挟みになる”オールドボーイ”がキツイ言葉をなんとか穏便な言い回しで伝言してくれる様は気の毒だがおかしみが漂う。

相棒だったヴィクマール衛星警官が主人公に激怒しつつも、失態についてはメンバーに口止めするよう指示してくれたのは助かった。

もしかしていいヤツなのでは?という気さえしてきた。

少なくとも有能なのは間違いないだろう。

再登場を待ちたい。

 

 

 

キム・キツラギ、趣味を教えてくれ

なぜかゴミ箱から見つかった主人公の捜査報告書から失われた過去の手がかりを得ることができた。

それによれば主人公は優秀な刑事であったようだ。

キムと主人公は内燃四輪車の前で、しばしこれまでの仕事ぶりを振り返る。

 

 

その中で、ふと話が逸れ、時には人の命を奪う必要もあるほどの警察の仕事のつらさを、キムは趣味で気分転換することによって乗り越えていると口にした。

キムの趣味、一体なんだろうか。

興味深い話題に、思わず身を乗り出した。

…………

…………

いや、言わないんかい。

思わず心の中でツッコミを入れてしまった。

これは主人公とキムがまだそこまで親しくないから話してくれないだけで、いつか分かるのか、それとも最後まで明かされないのか不明だが、個人的にはぜひとも聞いてみたい。

四輪車やインスタントカメラについてどことなく自慢気にしているところからして、ガジェット好きで機械いじりなどを趣味としているのではないかと予想している。

 

 

主人公が庭師からもらったゴム手袋をしていたところ、「ガーデニングでもしてみたらどうか」と提案された。

まるで想像がつかないが、まっとうになった主人公がジョウロで水やりをしているところを思い浮かべると、それはそれで悪くない気がしてくる。

 

 

 

いよいよミステリーらしくなってきた

ホテルの裏に吊るされた死体。

初めはミステリーというより暴力事件なのではないかと思っていたが、主人公が吐き気を堪えて捜査ができるようになると、なるほどこれには「謎」がたしかにあるなということが分かってきた。

 

 

被害者の男は、港の警備員には似つかわしくないほど高価なアーマーを身にまとい、胸には無数の星をモチーフとした入れ墨を入れていた。

この入れ墨が恐らく重要なものとなるのだろう。

写真に収め、今後捜査に活用していくこととなった。

 

 

現場に残された無数の足跡を分析したり、死体を吊るすベルトを撃ち抜こうとしたり試行錯誤しながらも少しずつだが捜査は進んでいく。

まずは死体を下ろすべきだという結論に達し、港の人々の手を借りるために再び門番メジャーヘッドと対決することになった。

 

 

 

ジャーヘッド戦のゆくえ

さて、前回意地でも謝らないと決め、ゲームオーバーにはならなくとも負けた形で終わった門番メジャーヘッド戦の結末について語るときが来た。

 

 

封鎖された港の門へと向かい、スト破りのリーダーに話しかける。

いかにも腕っぷしの強そうな彼にメジャーヘッド戦の助っ人を頼むという選択肢があったが、断られてしまった。

だが、階段にいるコール・ミー・マニャーナから「ヤツの話を聞け」という助言を得ることができた。

 

 

おそらく、前回メジャーヘッドの話を30分くらい聞いたあとに出てきた「思想を受け入れる」を選択することで物語が進行するのだろう。

すさまじい差別主義の思想のため、本心を言うと受け入れたくないのだが、ここは形だけ同意したふりをすればいいと考えて自分を納得させた。

 

 

そして再びメジャーヘッドに話しかける。

セリフをどんどん進めていき、「思想を受け入れる」が出てくるのを待った。

しかし、なにかが違ったのか、それとも初めの一回しか選べないのか、その選択肢は出てこなかったのである。

そうか、それなら……

 

もう拳で語るしかない。

 

前回は勝てる確率が17%ほどしかなかった。

正直、今回も勝てるとはとても思えない。

だが、話し合いで決着をつけることができないのなら力に訴えてみるしかない。

いざ、勝負!

 

 

え?75%

選択肢を選んだところ、確率がなぜかは分からないが上がってる。

いけるかもしれない。

高揚した気分のまま、メジャーヘッドに殴りかかった。

主人公の拳がメジャーヘッドの喉にヒットし、大男はよろめいて血を吐いた。

よし、入った!

 

薄明「やったな!右フックでとどめをさしてやれ!」

 

突然スキル「薄明」が飛び出してきた。

お前か……。

正直「薄明」はロクな事を言わないという印象があったが、たまにマトモなことを言うときもあり、少しばかり見直していたところがあった。

なにより、攻撃が当たって気分が浮き立っていた自分は、まんまその言葉に乗せられ、右フックを放った。

 

ジャーヘッドが身を起こし、その拳をガシッと受け止めた。

 

「薄明」は、ちょっと違ったみたいだな、というようなことを言い残し、消えていった。

 

「薄明」!お前ってやつは……!

 

ジャーヘッドは主人公の拳をギリギリと締め付けていき、耐久力が減り、また謝れ謝らないの問答が続き、そして――

 

初のゲームオーバー。

 

新聞記事風の画面が表示され、主人公が心臓発作で死亡したと書かれていた。

同僚たちは主人公のことをあれだけ酒を飲むヤツは見たことがないとか、心臓より先に心がだめになっていた、などと語っていた。

記憶喪失になる前の主人公について知ることができたのはケガの功名と言えるかもしれない。

 

 

直前のセーブデータからやり直すことにした。

Switchでプレイしており、いつもスリープ機能を使っていたのでこれが初めてのロードである。

すると突然靴を両方揃えるタスクを達成したというメッセージが表示され、スキルポイントが手に入った。

かつては頭脳派刑事を目指していたこともあったが、ここはもうスキル「肉体装置」にポイントを振るしかないだろう。

脳筋刑事のできあがりである。

 

 

確率85%

一撃目が喉元にクリーンヒットする。

そして追撃。

ここで、先ほどは選ばなかった「一旦後退して蹴りを放つ」という選択肢を選んでみた。

主人公がかなり後ろに下がる。

間があった。

ハズレか?

不安に思ったその時、ダイナミックな動きで主人公が蹴りを放ち、メジャーヘッドはもんどり打ってその場に倒れ伏した。

 

勝った!!

 

主人公はハイテンションな決めゼリフを言いながら意気揚々とメジャーヘッドが守っていたボタンを押した。

これでいよいよ死体が下ろせるのだろうか。

 

 

次回、俺とお前と内陸帝国Part4へ続く

 

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