3月24日放送のフジテレビONEにて放送中の『ゲームセンターCX』で名作ゲーム『ICO』がプレイされる。
よゐこの有野晋哉氏がゲームに挑戦するバラエティ番組であり、その最終回で『ICO』が取り上げられるということだ。
『ICO』を始めとする『ワンダと巨像』『人喰いの大鷲トリコ』などのゲームクリエイター上田文人氏の作品に思い入れのある自分としては、大変嬉しいニュースである。
今回は自分が思う『ICO』の魅力について紹介していきたいと思う。
・どんなゲームか
『ICO』(SCEI(現SIE)/PS2/2001年)は昨年発売20周年を迎えたアクションアドベンチャーゲームであり、今でも多くの人に愛され、語り継がれている名作である。
プレイヤーは角の生えたイケニエの少年イコを操作して、とらわれの少女ヨルダとともに「霧の城」から脱出することを目指す。
・洗練されたゲーム画面
『ICO』のプレイ画面を見たことがある人ならば、パラメーターなど、ゲームによくある表示が一切ないことに気がつくだろう。
本作では敵からのダメージという概念がないためHPバーは不要であるし、所持しているアイテムを使う局面もないためアイテムボックスもない。
あらゆる情報を排した画面いっぱいに映し出されているのは、ミステリアスな「霧の城」を、手をつないだ少年と少女が歩いていく光景である。
朽ちかけた城の中をさまよう2人の姿は、非日常的でありながらどこか郷愁を誘い、プレイヤーの想像力を刺激してくるだろう。
ゲーム的表現のない、この独特の世界観を持つ『ICO』は、一見するとアート作品のように見えるかもしれない。
では、実際本作は雰囲気の良いアーティスティックなだけのゲームなのだろうか?
それは違うと自分は考えている。
・ただの「雰囲気ゲー」ではない
『ICO』のゲームプレイの要となるのは、「霧の城」の各場所に設置されたギミックを動かし、進路を開くためのパズルである。
これを解くには観察力とひらめきが必要となり、かなり頭を使うことになるだろう。
そこにジャンプやぶら下がり、時折現れる「影」を退治するというアクション要素が加わることで、ゲームとしての体験を味わうことができるはずだ。
・少女ヨルダの「手を握る」
ヒロインとなる少女ヨルダは、淡く光っているよう見えるほどその肌も服も白い。暗い城の中で浮かび上がるその姿はカゲロウのように儚げである。
まるで幻のような彼女が、たしかにそこに居るのだと感じられるのは「手を握る」時である。
『ICO』の最大の特徴であるこの「手を握る」というゲームプレイは、様々な感情を呼び起こす。人によっては気恥ずかしさを覚えることもあるだろう。
ヨルダに触れることで、プレイヤーは自然と彼女に親近感を抱くようになる。
違う言語を話す彼女とは言葉によるコミュニケーションをとることはできないが、その手を握り、身振り手振りで意図を伝えあうだけで十分な絆が生まれていくのを感じるだろう。
そして敵として登場する「影」は彼女をさらって真っ暗な穴の中に引きずり込もうとする忌むべき相手である。
その「影」たちを、プレイヤーは勇敢に打ち倒し、今まさに頭の先まで闇の中に飲まれようとする彼女の手を握り救い出す。
その時、プレイヤーはゲームオーバーにならないためではなく、純粋にヨルダを助けたい一心で動いている自分に気がつくはずだ。
・心に残るエンディング曲『ICO-You were there-』
ボーイソプラノが響き渡るエンディング曲『ICO-You were there-』を聞く時、自分はまるで主人公のイコ自身が歌っているかのような錯覚に陥る。
その哀愁を帯びたメロディは、初めて聞く人でも心を揺さぶられるのでないかと思うほど美しい。
プレイヤーはイコとヨルダのこれまでの思い出を胸に、2人の迎えた結末を見つめながらこの曲を耳にするのだから、さらに感情に訴えかけてくるものがあるはずだ。
自分は『ICO』を思い出す時、必ずこの『ICO-You were there-』が頭の中で流れ出す。このゲームの世界観を創り上げるのに、この名曲は必要不可欠な存在であると思っている。
・まとめ
『ICO』の魅力は従来のゲームとは異なる表現で描かれた独自の世界観と、頭を使って解くパズル、熱中するアクション、そしてなにより印象的なヒロイン・ヨルダである。
エンディングに待つ名曲『ICO-You were there-』とともに、『ICO』の感情を揺さぶるゲーム体験は多くの人の記憶に刻みつけられ、その結果、本作は20年を経過してなお色褪せない名作となっている。
・最後に
この『ICO』は元々PS2で発売され、PS3でリマスター版が出ているが現行ハードであるPS5やPS4ではまだ遊ぶことができない。
PS4で発売された『ワンダと巨像』の素晴らしいリメイク作品のように最新の技術で描き出された『ICO』、もしくはリマスターが出てくれることを期待したい。