『ライフイズストレンジ』(スクウェア・エニックス/PS4/PS3/iOS/Android/2016年)はアメリカの高校を舞台に、時間を巻き戻す超能力を手に入れた少女マックスと親友のクロエが女子学生の失踪事件を追うアドベンチャーゲームである。
『ライフイズストレンジ』シリーズの初代にあたり、現在もリマスター版である『ライフイズストレンジ リマスターコレクション』の開発が進められているなど根強い人気を持つ作品となっている。
ではなぜ本作はここまで愛され続けているのだろうか。その理由を考えてみた。
以下の3点を『ライフイズストレンジ』のキーポイントとして挙げたい。
・共感を呼びやすい学校という舞台
・魅力的に変わっていく主人公マックス
・親友クロエとのまぶしい思い出
・共感を呼びやすい学校という舞台
本作の舞台となるブラックウェル高校は写真の授業に力を入れており、主人公マックスは写真家になる夢を抱いてこの学校へと入学する。
授業には有名写真家が講師として招かれており、アーティストを夢見る生徒たちが彼の元に集っている。彼らは写真家の卵として自負心や嫉妬心を胸に抱え、そして時に将来への希望や不安を口にする。
彼らはまたごく普通の学生として、友情を築いたり、恋愛をしたり、クラブ活動に精を出したりめいめいに青春を謳歌してもいる。
多くの人が体験している学校生活という舞台設定が共感を呼びやすいというのもこのゲームの人気の一つだろう。
国は違えど、学生時代に誰もが抱く様々な悩みと向き合うキャラクターたちに、プレイヤーは自身の思い出を重ねて懐かしさを覚えるだろう。
その郷愁が『ライフイズストレンジ』をより一層印象的なゲームにしているのではないだろうか。
・魅力的に変わっていく主人公マックス
ゲームの冒頭では、マックスは自信のないおどおどとした少女として描かれている。彼女には才能があるのだがそれを信じられず、せっかく撮影した写真を破り捨ててしまう。
プレイヤーはマックスの日記や、アイテムを調べた時に聞くことのできる彼女の感想を通してその内面に近づいていく。
微笑ましくなるような少女らしい純粋な表現やユーモアセンスを感じるコメントからはマックスの人間的魅力を感じることができるだろう。
そしてなによりも彼女がどれほど写真を愛しているか、そしてどれだけ本気で写真家になりたいと願っているかを理解することになる。
だが、一見大人しそうな彼女の中に秘められたチャーミングな素顔や写真への情熱は、まだ周囲の人々には伝わっていないのである。
そんな彼女が時間を巻き戻すという力を得て、徐々に変わっていく。
リスクを恐れてできなかったことに挑戦する勇気を持てるようになり、そしてまた彼女の表情も生き生きと魅力的になっていくのである。
殻を破ったマックスは周囲の人の心を掴み、入学したばかりのブラックウェル高校で新しい人間関係を築き上げていく。
そしてプレイヤーたちもまた、これまで表に出なかった彼女のいたずらっぽい一面や大胆不敵な行動に目を見張るとともに、その成長を大いに喜び、応援していくだろう。
・親友クロエとのまぶしい思い出
マックスは5年ぶりに再会した親友クロエとともに少女失踪事件の真相を追うことになる。
ごく普通の少女であるマックスと、髪を青く染めパンクファッションに身を包み、乱暴な言葉づかいをするクロエは対照的な存在である。
強引なクロエと彼女に振り回される一方だったマックスとの、次第に変わっていく関係性も見どころの一つである。
行方不明の女子学生を探す2人は、足を使って地道な捜査を繰り返す。マックスの超能力を持ってしても非力な少女である2人は、何回も危険な出来事に遭遇する。
だが、そんな中でもキラキラと輝くような瞬間がいくつも生まれていく。
ささいな日常の会話、2人で笑いあったこと、危機を乗り越えたこと。それらが本作独自の美しいグラフィックでハッとするほど印象的なシーンとして描かれ、プレイヤーの心にノスタルジックな思い出として深く刻みつけられるのである。
・最後に
『ライフイズストレンジ』は作中にも出てくる「エモい」という言葉でよく語られる。
たしかに本作の特徴を表すにはピッタリの表現である。だが自分はその「エモさ」を具体的に説明してみたいと思い、今回このような文章を書くに至った。
拙い文章ではあるが、本作の魅力が少しでも伝わったなら嬉しく思う。
また、『ライフイズストレンジ』は現在スマホでも遊ぶことができ、さらに開発中の本作のリマスター版『ライフイズストレンジ リマスターコレクション』では対応ハードがPS4/Switch/Xbox One/PCとなっている。
発売日はまだ未定ではあるが、このゲームはいつプレイしたとしても名作であろう。
リマスター版で一人でも多くの人に『ライフイズストレンジ』の素晴らしいストーリーが届くことを願っている。