『ディスコ エリジウム ザ ファイナルカット』(スパイク・チュンソフト/PC/PS5/PS4/Switch/2022年)のプレイ日記Part4をお届けする。
前回からかなり期間が空いてしまったので、ストーリーも結構進行している。
語りたいことも山ほどあるのだが、それを全部書いたらとんでもない長さになってしまうため、自分にとっての印象的なイベントを中心にこれまでのプレイを振り返っていきたい。
ちなみに自分はSwitch版を遊んでおり、アーキタイプは「神経質」である。
※なお、このプレイ日記ではネタバレも含むため、未プレイ・プレイ中の人は注意してほしい。
前回のプレイ日記はこちら。
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一気に借金返済
前回メジャーヘッドを蹴り倒し、これで物語が進行すると喜んだが、そこから死体を下ろすまでにはまだ様々なイベントがあった。
まず、組合の長イヴラート・クレアを訪れたが、時間が遅すぎたため彼はすでに帰宅してしまっており、翌日また出直す必要が生じてしまった。
相棒の刑事キム・キツラギも勤務時間が終わったのでそろそろ帰ると言い出した。
キムが立ち去るのを待っていたが、なかなか動こうとしないので主人公が移動するとそれまで通り後ろを追いかけてくる。
ゲームシステム的になんらかのタイミングでないと、パーティーから離脱できないようだ。
そうこうしているうちに時刻は23:00を回っていた。
キムの姿を見ながら、
残業
というリアルな二文字が自分の脳裏によぎった。
RCMで残業手当がきちんと払われていることを祈りたい。
ホテルに戻ったが、130リァルを超す借金を返せる見込みなど当然なく、恐れていた野宿をする羽目になるのかと思ったその時、キムが妙案を思いついたようだった。
外へ出て内燃四輪車へ向かうと、積んであったホイールキャップを指し示して、それを質屋に持っていこうと提案してきた。
以前連行した金持ちが所有していたものを押収し、ずっと保管していた、と説明するキムの口調はいつになく歯切れが悪い。
どうやら彼はRCMの規則に反することは理解しつつも、このホイールキャップを私物化したいと思っていたらしかった。
質屋ではこのホイールキャップを200リァル近い大金で質入れすることができ、一気に借金を返せることになった。
どれだけ高級な品だったのだろうか。
必要な金額を主人公に渡すと、キムは残りを懐にしまいこんだ。
あらためて考えると、2人で証拠品の横流しを堂々とやってのけたわけだ。
……いいのか?
これが後々のストーリーに関わってくる可能性を考えると少々不安にも思うが、どう考えても130リァルもの借金は正攻法では到底返済できそうにない。
とりあえずよしとしよう。
そしてこの質屋では無くなった主人公の銃についての情報を得ることができた。
記憶を失う前夜、主人公は尋常でない様相で店に駆け込んできて、自分の銃を質入れしようとした。
銃は扱っていないと断る店主に対して、自殺の真似事までして強引に自分の銃を引取らせたのだという。
その値段、15リァル。格安だ。
いかに店主が引き取りたくなかったのか分かる値段である。
しかもその銃は、謎の女性がすでに買い取ってしまい、再び行方知れずとなっていた。
主人公の悪行
記憶を失う以前の主人公の異常な行動については、別ルートでも情報が得られた。
それは、ホテルの元従業員シルヴィアの証言である。
”吊るされた男”のことをRCMに通報した彼女に無線を繋いだところ、事件のことよりも主人公がホテルでやらかした横暴な振る舞いの数々について詳しく知るところになった。
それによれば、主人公は「俺が法だ!」と喚き立て、客にしつこく絡んだり、ホテルの皆が大事にしていた鳥の剥製を壊したり、銃をちらつかせた挙げ句それで自殺の真似事までしたようだ。
シルヴィアがホテルを辞めたのも、主人公の言動に耐えかねてのことだったのだという。
ひたすら「面目ない」というセリフを繰り返すことになってしまった。
それにしても、この情報は結構ショックだった。
なぜなら、ここで明かされた事実が、自分の想定していたよりも数段ヒドかったからである。
もう少し悲哀に満ちているのかと思ったが、実際は、はた迷惑で悪い意味でアグレッシブだった。
思い描いていたロールプレイが揺らぎそうなほどであった。
他人と過去は変えられない――有名なその言葉を実感する。
同時に、自分と未来は変えられる――という続きも思い出す。
RCMの医師”ラザレス”と無線で話した際、記憶を失くしたと言う主人公に、「それなら生まれ変わったつもりになればいい」と彼は言った。
”ラザレス”は主人公に対して終始投げやりな態度であったため、この言葉も親切心から出たというわけではなさそうだが、聞いた時に一瞬ハッとさせられた。
どん底から這い上がる主人公というロールプレイを思い描いてここまでゲームを続けてきたが、そこには辛かった過去を思い出し、それを乗り越えてかつての輝きを取り戻すと言った筋書きを当てはめていた。
過去と完全に決別するという考えはなかったため、”ラザレス”のこの言葉がなんらかの伏線なのか、それともただの雑な返しなのか、今後の展開で明らかになるのを待ちたい。
余談だがこの”ラザレス”、飴を盛大に噛み砕きながら無線に出るのだが、それだけで彼のガサツさがプレイヤーに伝わってくる。
ディティールの凝り具合に感心したシーンだった。
長い一日の終りに
さて、ホイールキャップを質入れしたおかげでホテルで借金を返済し、今夜の宿代も支払うことができた。
キムは自宅に帰るのかと思っていたが、ホテルに部屋を取るようである。
インタラクトできるのが謎だった主人公の隣の部屋に泊まるようだ。
2人は部屋の前で別れるのかと思いきや、キムは今日一日の捜査の結果を話し合うためにバルコニーに出ようと言う。
時刻は午前零時を回っていた。
外は連日氷点下を記録するほどの寒さだとゲーム中幾度も耳にした。
そんな中バルコニーで話す必要があるのだろうか……と正直思ったが、キムがタバコに火をつけた時にそのためかと納得した。
「電気化学」がタバコを吸うキムがクールだ!と騒ぎ出す。
キムは一日の終りに一服しながらその日の捜査を振り返る習慣があるのだという。
タバコをもらうという選択肢もあり、2人で吸っていた方が絵になるとは思ったのだが、ロールプレイの方針として吸わないと決めていたので、断念した。
青い手帳を開いて進捗を確かめる彼の表情は昼間よりも柔らかく、驚いたことに笑みさえ浮かべてみせた。
一つ一つ捜査の状況を整理し、明日の予定まで確認し終えると、2人は黙ってマルティネーズの街の灯を見つめた。
キムのタバコの煙がゆっくりと立ち上り、降り始めた雪の中に消えていく。
その光景を見守りながら、自分は確信した。
この先の展開がどうなろうと、たとえエンディングが望むものにならなかったとしても、この一瞬だけでこの『ディスコ エリジウム ザ ファイナル カット』は自分の中で名作足りうると。
もしかするとバルコニーで一日を振り返るというのはクリアするまで毎晩続く恒例のイベントに過ぎないのかもしれない。
だが、いわばビジネス関係で出会ったばかりの2人が長い一日を共にする中で、お互いのことが少しずつ分かってきて打ち解け始めたというこの距離感が醸し出す雰囲気は初日にしか味わえないだろう。
くたびれかけた中年男2人が並んでいる渋い絵面も、自分が今までプレイしてきたゲームではあまり見かけないものだったが、これまで観てきた洋画や洋ドラの中で何度も目にしてきたような気がしてくる、どこかノスタルジックな空気感が漂うものだった。
また、本当かは分からないが、本作の天候はランダムだと聞いた。
ここで2人の沈黙を埋めるように雪が降ったのが偶然だとすると、相当粋なタイミングで天候が切り替わったとしか言いようがない。
最後に
とてつもない文章量で知られる本作は、一回のプレイで入ってくる情報量が非常に多い。
自分はロード無しで選べる選択肢はすべて試していくプレイをしているので、毎回大量の文章と向き合うことになっている。
そのため気力・体力・時間がすべて揃ったタイミングでプレイしようとしており、進行がひどくゆっくりになっているのだ。
もちろん、ストーリーの先が見たい、エンディングがどうなるのか知りたいという気持ちはある。
だが、自分は特にストーリーもののゲームはやはり先の展開を知らない一周目が一番面白い気がするのだ。
この『ディスコ エリジウム ザ ファイナル カット』の貴重な初見プレイを、後悔しないようにじっくりと進めていきたいと思っている。
どうか気長に付き合ってもらいたい。
次回、俺とお前と内陸帝国Part5へ続く
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