2023年ももう7月、今年の半分は過ぎたということであり、上半期GOTYを決めるチャンスがやってきた。
2022年3月から始まったこのブログだが、昨年一年間でプレイしたゲームはそれなりにあるものの、クリアしたゲームはたった2作品(『Voice of Cards ドラゴンの島』『春ゆきてレトロチカ』)のみだった。
よって年間GOTYを語るのにはふさわしくないと判断して見送ったわけだが、今年は違う。
なにせ1月にゲーミングPCを買ってからというもののSteamの小規模作品を中心にかなり多くのゲームをクリアしてきた。
ここぞとばかりにこの上半期を振り返って、GOTY作品を決定してみることにする。
今回のGOTYで取り上げるのは、デモ版・早期アクセスを除く作品のうち、自分がプレイしてエンディングまで見た(複数エンディングでもひとつは見た)作品とする。
ちなみに今年発売されたゲームではなく、あくまで自分が2023年にプレイしたゲームである。
まずは候補作を列挙していきたい。
1.『A Short Hike』(Switch)
2.『Love Choice 択愛』(Steam)
3.『市立カクレザ図書館』(Steam)
4.『7 Days to End with You』(Switch)
5.『キラキラミラ 8人の遺伝子異常者と血の幽霊』(Steam)
6.『EL NE RUE』(Steam)
7.『シーズン~未来への手紙~』(PS4)
8.『Florence』(Steam)
9.『ファミレスを享受せよ』(フリーゲーム)
10.『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』(Switch)
11.『じゃあ、また』(Steam)
12.『夏休みは切島邸にて(ナツキリ)』(Steam)
13.『コーヒートーク』(Steam)
14.『ドキドキAI尋問ゲーム』(フリーゲーム※現在公開終了)
15.『A TAVERN FOR TEA』(Steam)
16.『DON’T SAY YES』(フリーゲーム)
17.『- あのころの じぶんへ -』(フリーゲーム)
18.『よりみちアイランド』(フリーゲーム)
19.『午前五時にピアノを弾く』(Steamフリーゲーム)
20.『When the Past was Around』(Steam)
このうち1~17の作品については感想を書いているのでよければそちらも見てもらいたい。
印象的だった作品については個別記事も書いてある。
gameandbooknadonado.hatenablog.com
gameandbooknadonado.hatenablog.com
gameandbooknadonado.hatenablog.com
と、まあ20作品もプレイしているならばGOTYも決め甲斐がありそうだ。
しかしこう見返してみると見事にADVばかりのラインナップになっている。
プレイ中の作品の中にはADV以外もある(例:『ドラゴンズドグマ:ダークアリズン』『Hi-Fi RUSH』『ティアキン』『スト6』)のだが、数時間でエンディングを見ることのできる短編ADVは気軽に遊べるため手が伸びやすかったというのもあるだろう。
さて、問題となるのは「GOTYの選定基準はなにか?」という点である。
このブログではさきほど紹介した過去記事にあるように、月ごとにプレイしたゲームの感想を書き、月間MVP作品を決定してきた。
このMVPを決めるときにも実は結構悩んでいたのだ。
それは「万人向け」と「自分の好み」のどちらを優先するべきかという点についてである。
個人ブログを見に来てくれるような人は、果たしてどういう内容の文章を読みたいのか?
答えは未だに出ないままである。
そのため、今回のGOTYもそんなのアリか!?と思うかもしれないが「万人向け部門」と「独断と偏見部門」でそれぞれTOP3を決めることにした。
それでは行ってみよう!
- 万人向けGOTY 第3位 『Florence』(PC・Windows, MacOS/Switch/iOS/Android)
- 万人向けGOTY 第2位 『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』(Switch/Steam/iOS/Android)
- 万人向けGOTY 第1位 『A Short Hike』(Switch/Steam)
- 独断と偏見GOTY 第3位 『市立カクレザ図書館』(Steam)
- 独断と偏見GOTY 第2位 『Coffee Talk(コーヒートーク)』(Steam/Switch)
- 独断と偏見GOTY 第1位 『ファミレスを享受せよ』(フリーゲーム)
万人向けGOTY 第3位 『Florence』(PC・Windows, MacOS/Switch/iOS/Android)
25歳の女性フローレンスの恋をみずみずしく描いたADV。
イラストを中心にストーリーが進展し、時折ちょっとしたミニゲーム風のパズルが登場するという手法が用いられている。
この形式は前からあったのかもしれないが本作で一躍脚光を浴びたので、同様の作品を説明するときに「『Florence』みたいなゲーム」というだけでだいたい通じるようになった。
ここで出てくるパズルは基本的にとても易しく、解けないためストーリーの進行が滞るということはない。
そのため、普段ゲームを遊ばない人でも本作はクリアできると思う。
1時間もかからないでエンディングにたどり着けるはずだ。
普遍的なラブストーリーなので、恋愛ものの映画・ドラマや本が好きな人なら興味を持ってプレイできるだろう。
イラストもおしゃれで可愛らしく、ビジュアルも一般向けである。
本作のレビューをいくつか読んだが、ネタバレになるためかストーリーについて書かれたものが少ないように感じた。
ぜひとも恋バナ好き同士が集まって本作をプレイして、わいわい盛り上がる様子を実況動画として投稿したり(許可が出ているかは調べてもらいたい)、ラブストーリーとして本作を見た時の感想を聞かせてほしいと思う。
万人向けGOTY 第2位 『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』(Switch/Steam/iOS/Android)
スクウェア・エニックスから出たホラーミステリーADVである。
発売前にはかなり情報が伏せられており、どういったゲームなのか想像をふくらませていたが蓋を開けてみると、相手の裏をかく思考の読み合いが炸裂する呪殺バトルであり、バディものであり、陰惨な事件が登場するシリアスなミステリーであり、おどろおどろしいホラーであり、そして凝ったギミックが仕掛けられた、プレイヤーを一瞬たりとも飽きさせないエンタメてんこ盛りの作品だった。
序盤からホラー展開が目白押しで、配信文化を意識しているという開発陣の発言も納得できるほどリアクションしがいのある、盛り上がるポイントがいくつもあるゲームである。
Twitterでも発売前はほとんど話題に出ることがなかったが、リリースしてからというものの「パラノマサイト」で検索すると読み切れないほどのつぶやきが目に飛び込んできた。
このゲームについてネタバレは避けつつも何か語らずにはいられないほどプレイヤーのテンションが上がってしまう、そんな面白さに満ちた作品だったと言えるだろう。
序盤は手に汗握る呪殺バトルで幕を開けるが、次第に物語は聞き込みと推理で展開する王道のミステリーものへと移り変わっていき、あくまでも超常現象があるという前提ではあるが比較的落ち着いた、どちらかと言えば人間ドラマを中心としたテイストを帯びてくる。
過去に起こった数々の痛ましい事件と現在進行中の事件とが交差し、やがて一つに収束していく流れは見事という他なかった。
そしてまたホラー要素を前面に打ち出したクライマックスで物語は大いに盛り上がり、幕を閉じるのである。
ADV好きにはぜひともプレイしてほしい一作であるが、注意点としては序盤のホラー展開の恐ろしさがある。
苦手な人は実況などで確認してから購入してもらいたい。
万人向けGOTY 第1位 『A Short Hike』(Switch/Steam)
小鳥のクレアが島を探索し、山の頂上を目指すオープンワールドADV。
なんというか正直、このゲームの欠点が見当たらない。
ほのぼのとした世界観は老若男女におすすめであるし、滑空アクションはゲームならではの体験として爽快感が味わえる。
詳しくは以前に書いた紹介記事を見ていただきたい。
gameandbooknadonado.hatenablog.com
いわば優等生的作品で、手堅くまとまっており誰かに「おすすめゲームってある?」と聞かれた場合十中八九この作品を進めておけば問題なしだと思われるほどである。
プレイした人の誰もが幸せな気分になれるという稀有なゲームである。
よって文句なしの万人向けGOTY 第1位に選出した。
さて、それではいよいよ「独断と偏見部門」の発表である。
もう知名度や万人受け、対応機種などは問題ではない。
とにかく自分が好きだというゲームをここでは思う存分語っていきたい。
趣味全開のため自分語りがたくさん出てくるので、どうか覚悟のうえで読んでいただきたい。
独断と偏見GOTY 第3位 『市立カクレザ図書館』(Steam)
自分は実は高校の頃まで、図書館の司書になりたいと思っていた。
子供の頃からとにかく本が好きで、自分がずっと続けている最古の趣味は「読書」だと言えるくらいであり、ゲームよりもはるかに長い付き合いだ。
本に関わる仕事がしたいということで中学1年生くらいまでは小説家になりたいと考えていたが、もう少し現実的な職業を、と思い直し司書はどうだろうと考え――そして現在、自分は――まったく本と関係ない仕事をしている。
そのため、自分の果たせなかった「司書になる」という夢を叶えてくれたこの『市立カクレザ図書館』を拍手喝采と共に独断と偏見GOTY 第3位に選びたい。
日本の東北の地方都市をモデルにしているらしい「カクレザ市」の図書館を舞台に、新人司書として働く1か月を体験できるゲームである。
メイン業務はカウンターでの貸し出し・返却の手続きであり、これはワンクリックで終わる簡単な作業であるためそんなに目新しいシステムというものでもない。
その神髄は、ゲームオリジナルの260冊の本すべてにタイトル・著者・ジャンル・出版社・そして概要が設定されているところにある。
もっと正確に言うと、利用者がどんな本を借りるのかを見るのが楽しいのである。
親子連れなら絵本、男子学生ならファンタジー小説と野球の本、カフェで働く人ならおしゃれなブックカフェの写真集などひとりひとりグラフィックも名前もある常連の利用者がいかにもそれらしい本を借りていく。
だがこの作品は彼らと仲良くなることを目指すゲームではないため、あいさつ程度しか言葉は交わさない。
彼らのプロフィールは明らかにはなっておらず、借りる本から人となりを想像するだけなのだが――それがなんとも言えず面白い。
たとえばこのブログを読んでいる人はほぼゲーム好きの人だと思う。
他人のプレイしているタイトルが気になったりしないだろうか?
好きなゲーム10選のような記事やツイートを見て、書いた人がどんな人なのか考えたことはないだろうか。
「この人とは趣味が合うな」とか、「この人同じジャンルのゲームばかりプレイしているし、きっとこのゲームも好きそう」などと心の中で思い浮かべたりしないだろうか。
いわばその”本”バージョンが体験できるのがこの『市立カクレザ図書館』なのである。
そして、同じ本を借りていく利用者が実は家族だったり友人だったりという関係性が次第に明らかになってくるのも興味深い。
ボリュームとしては少なめで、実績を全解除しても約3時間ほどである。
難しい操作はないので、1周するだけなら1時間ほどでクリアできるかもしれない。
本好き・図書館好きの人、キャラクターの設定を深読みするタイプの人にぜひおすすめしたい。
独断と偏見GOTY 第2位 『Coffee Talk(コーヒートーク)』(Steam/Switch)
自分の中ではこの作品は有名なのだが、実際どれくらいゲーマーの中で知られているのか温度感がよく分からない。
カフェのバリスタとなって客にドリンクを提供する穏やかな雰囲気のADVである。
詳しくは過去に紹介&感想記事を書いているので見てほしい。
gameandbooknadonado.hatenablog.com
実は、自分は長い間このゲームを「食わず嫌い」してきた。
ドリンクを作るというのが難しく思えたし、客たちの話をただ聞いているだけで面白いものだろうか?と疑問に思っていたのだ。
そして舞台は異世界のアメリカ・シアトルであり吸血鬼やエルフなどファンタジー的な種族が出てくるのだが、彼らの抱える問題はリアルな世界にも通じるものだという。
なんだか真面目なゲームなのだろうか、社会派ドラマみたいな感じだろうかとなんとなく遠巻きに見ていたのだが、ある記事を読んで突然興味がわいてきたのだった。
リンクを貼っていいものか分からないため、記事タイトルを紹介するので各自検索してもらいたい。
電撃オンラインの、
関係性オタクにはたまらない? 『コーヒートーク』は寒い冬にもピッタリな1本【東城咲耶子のおすすめインディーゲーム】
という記事である。
タイトル通り、「関係性オタク」(キャラクター同士の友情・恋愛・ライバル関係などの設定に注目するタイプの人たちのこと)にこのゲームがお勧めだということを文章内で非常にアツく語っており、自分はこんなにも『コーヒートーク』をテンション高めに説明する人を初めて見た気がした。
そして同時に、これまでただのお行儀の良いゲームだと思っていた本作のイメージがガラッと変わったのだ。
これを読んで面白そう、やってみよう!――と思った自分はどうやら「関係性オタク」であるようだ。
不思議なもので、理路整然とした文章が説得力を持つのと同じくらい、パッションに溢れた文章もまた時に人の心を動かすのである。
本作では主人公(プレイヤー)がバリスタなため視点はカウンター席に固定されており、そこに座った客同士が会話をしているのがなんとなく耳に入ってしまう、という体で物語は進む。
基本的に会話は2人もしくは3人で交わされ、大抵の客はペアになっている。
友人、恋人、親子、初めて知り合った同士――などである。
ペアの片方だけがやってきて悩みを吐露するのを聞いたりするうちに、だんだんと2人の関係、そして抱えている問題などが見えてくる。
普通のゲームなら主人公が積極的に2人の仲を取り持ったり、アドバイスをしたりするのだろうが、この作品ではドリンクを提供する以外はほとんど口を出すことはない。
主人公と客の関係ではなく、客同士の関係にスポットライトが当たっているのである。
カフェの店員と客、というほどよく開いた距離感が心地よく、それでいて2人の行く末にも興味を抱けるくらい深い話も聞いてしまうという実に面白い設定のゲームになっている。
このゲームのグラフィックが、自分にとってはなんだか懐かしく感じるものなのも好印象に感じる理由の一つなのかもしれない。
自分が本格的にゲームを遊ぶようになったのは家にPCがやって来てからである。
Win95の作品が自分のゲーマーとしての原点なのだが、『コーヒートーク』のグラフィックにはどこかその頃のゲームと同じテイストを感じる。
「関係性オタク」としての期待に十分応えてくれる内容で、キャラクターが悩みを抱えていても深く感情移入することなく穏やかな気分で行く末を見守ることができ、グラフィックもホッとする懐かしいテイストの本作。
クリアして時間が経つごとにだんだんとこのゲームの評価が自分の中で上がっていくのを感じている。
このゲームは決して派手ではない。
すごい盛り上がりがあるわけでもないので、(「関係性オタク」をのぞけば)誰かに猛烈プッシュするポイントというのもあまり見当たらない。
でも自分はこのゲームが好きなのだ。
それは激しい感情というよりは、ほんわかと温かいような気持ちである。
「神ゲー」とまでは言わないが「良作」であることは間違いない。
リラックスしたい気分の人にぜひともおすすめしたいゲームである。
独断と偏見GOTY 第1位 『ファミレスを享受せよ』(フリーゲーム)
このゲームをプレイした後、なかなか現実に戻って来られなかった。
上半期にプレイした作品の中で、最も自分を物語の中に引きずり込んだのが『ファミレスを享受せよ』なのだ。
以前書いた紹介記事はこちらである。
gameandbooknadonado.hatenablog.com
2月のMVP作品でもあり、あらためて紹介&選評も書いているので詳しくはそちらを見てほしい。
gameandbooknadonado.hatenablog.com
2~3時間でクリアできるテキストADVなのだが、その間どっぷりと独特の世界観に浸り、自分が実際に舞台となるファミレスの中を歩き回っているような感覚があった。
特徴的な黄色と青と黒だけで描かれたイラスト、懐かしいMIDI音源のBGM、心地よいSE、そしてなんとも味わい深いキャラクターたちのセリフ。
それらすべてが組み合わさって悠久の時の中に取り残されたファミレス「ムーンパレス」の気怠く、奇妙に明るい空気感が構築されていたのだと感じる。
詳しいゲーム紹介は以前の記事を参照していただくことして、ここからはこの作品に対しての自分の思い入れを語っていきたい。
フリーゲームとして公開されている本作だが、今年の夏にSteam版とSwitch版の発売が予定されている。
ゲームメディアでも記事になったためか、このところ本作をプレイする人や実況をする配信者が増えてきたようだ。(本作は配信OK)
「ファミレスを享受せよ」で検索すると毎日たくさんのつぶやきが目に入る。
いろいろな人の感想を読みながら、うなづいたり思いもよらない着眼点にハッとさせられたりもするのだが、その中にはまだ自分の探している答えは見つかっていない。
答えとは――自分は、なぜこれほどこの作品に惹かれるのか、それをはっきりと言葉にできていないのである。
これまでこのブログでは何回もこのゲームを取り上げ、たくさん文章を書いてきたがまだ本質に迫れていないと日々感じられてもどかしい。
同じゲームをプレイしたとしても感想は人によって異なるし、自分とまったく同じ考えの人はきっといないのだろう。
だがどこかで誰かが言語化してくれていないかと、それを期待して思わずネットで検索をしてしまうのをやめられない。
そしてまたいつか改めて本作について語ることができるよう、自分も文章力を上げていきたいと、そう思わせてくれるほどの魅力が『ファミレスを享受せよ』には”満ちに満ちている”のである。
というわけで独断と偏見GOTY 第1位は『ファミレスを享受せよ』となった。
現時点で第2位を引き離す独走状態であり、このままだと2023年の年間GOTYになりそうである。
そうなって欲しくもある反面、「ファミレス越え」の作品に出会いたいと願う自分もまた存在している。
下半期もまたいろいろなゲームをプレイして、2023年下半期GOTYも決めたいと思っているし、年末には憧れの年間GOTY記事も公開したい。
よければまた読んでもらえたらうれしい。
長い記事にお付き合いいただきありがとうございました!