カフェのオーナー兼バリスタとなって客の話に耳を傾け、彼らにぴったりのこれぞという一杯を提供するADV『コーヒートーク』。
4月20日に続編である『コーヒートーク エピソード2:ハイビスカス&バタフライ』も発売される本作。
先日、遅ればせながら1作目のSteam版をクリアしたのでその感想を語っていきたい。
どんなゲームか
舞台となるのはシアトルの町の一角にある夜しか営業していないカフェ「コーヒートーク」。
主人公はその店のオーナー兼バリスタとなり、客の注文に応じてドリンクを作って提供していくのである。
しかし客となるのは人間ばかりではない。
ここはシアトルとは言っても異世界であり、エルフ、オーク、人魚、吸血鬼などさまざまな種族がやって来る。
とはいえ彼らはモンスターではなく現実世界の人間と同じように衣服を着て、言葉を話し、仕事をしたり恋をしたり人生に迷ったり抹茶ラテでほっこりしたりするのである。
それぞれが何らかの悩みを抱えており、その相談に乗るのが主人公――ではないところが『コーヒートーク』のポイントだろう。
中心となるのは常連客である人間のフレイヤであり、にぎやかな性格の彼女が客の話に半ば野次馬的に口を挟んだりツッコミを入れたりしているうちに、自然と初対面の客同士も会話が弾んでいく。
悩みを打ち明けるのが客ならば、その相談に乗り解決策を提示するのもまた客なのである。
主人公はエスプレッソやダークチョコレートを淹れながら、客同士のよろずお悩み相談にひたすら耳を傾ける立場なのだ。
自分が話さないのに面白いのか?
主人公はまったくしゃべらないという訳ではなく客が一人しかいない時は声をかけ、巧みな話術で身の上話や興味深いエピソードを引き出していく。
作中”ミステリアス”と評される主人公だが落ち着いた物腰で相槌をうち、客の気分にぴったりのドリンクを淹れることで彼らの心を解きほぐしていくのである。
なかでも毎日開店直後に訪れる常連客フレイヤとの親し気なやりとりは微笑ましく、表情豊かな彼女と話しているのは純粋に楽しい。
フレイヤは作家を目指しておりカフェに来ては原稿を書いているのだが、他の客と違って、彼女は主人公に相談を持ち掛けてくるのである。
書きかけの彼女の原稿を(半ば強引に)読まされ、アドバイスを求められる。
物書きでもない主人公の意見に真剣に耳を傾けるフレイヤの姿からは彼女の信頼が伝わってきて温かい気持ちになり、自然とその挑戦を心から応援したくなってくるのだ。
そして彼女は他の客と話していても、不意に主人公に話題を振ってきて、話に引き入れて来ることもある。
客たちの決断を左右するような重要なことを言うわけでもなく、プレイヤーの意思を反映するような選択肢もないが、会話に参加できるのはやっぱりちょっと楽しい。
バリスタのお仕事
ドリンクは3種類の原料を混ぜ合わせることで完成する。
ベースとなるのはコーヒー・紅茶・抹茶・ココアの4種類であり、それにミルクやはちみつ、しょうが、レモンなどサブ材料から2種類を選ぶ。
客はオーダーをする時にたまに具体的なドリンク名を言うことがあり、それが初登場のものだった場合「しょうがとシナモンが入っている」などのヒントをくれる。
このヒントを元に配合を考え、実際に作っていくのだが――まあ、うまくいかないこともある。
材料が正しくても混ぜ合わせる順番が違うだけで別の飲み物になってしまい、客は「だいたい合ってるんだけど、ちょっと違うんだよな……」などとつぶやきながらドリンクを飲む。
悔しすぎる瞬間である。
そしてドリンクによってはラテアートを施すことができるのだが、さじ加減がとてつもなく難しく大抵すごい代物が出来上がる。
「コーヒートーク」で検索するとサジェストで「ラテアート」が出てくるので、恐らくどのプレイヤーも苦戦しているのだろう。
ラテアートはオーダーされた時以外はしなくていい上、出来栄えがパッとしなくてもストーリーには全く関係なく、点数評価もないので安心してほしい。
奇跡のベストエンディング
客たちは抱えている悩みに向き合い、ゲームのエンディングではそれぞれが決断を下し、新たな一歩を踏み出す。
主人公は会話において彼らの助けになることはなかったが、ここぞという局面で適切なドリンクを提供することによってその運命を左右した――らしいのである。
というのも自分は数々の失敗ドリンクを作ってきたが、どうやら分岐に関わる場面では見事正解を連発し、彼らはベストエンディングを迎えられたようなのだ。
逆に失敗バージョンがどうなるのかも気になるが、彼らをあえて不幸にするのも気が進まないので、自分が見たエンディングを正史としてこのゲームの幕を閉じることにする。
最後に
『コーヒートーク』は穏やかな作品であると思う。
客の悩みにはシリアスなものもあるが、それが狼男や猫人間などが暮らす異世界の出来事であるというフィルターを通すことでかなりマイルドになっている。
主人公は彼らの問題に口ではなくドリンクを出すことによってその背中を優しくそっと押す。
客同士が心の中を打ち明け合い、アドバイスをしたりされたりしているのを見守るだけの立場は時にもどかしくもあるが、決断を求められない立場にいることはある意味で気楽さも生んでいる。
無事ベストエンディングを迎えられたこともあって、クリア後には清々しい気持ちになり、プレイして良かったと思うことができた。
そして作中に登場した美味しそうなドリンクを飲んでみたくて堪らなくなったのだが、こんなお洒落なメニューを取り揃えているカフェが果たしてあるのだろうか?――というか、実在する飲み物なのかも不明だ。
どこか「ガラハッド」が飲めるお店があってほしいと願うばかりだ。
そしていよいよ明日発売される『コーヒートーク エピソード2:ハイビスカス&バタフライ』にも本作同様の面白さをぜひ期待したい。