現在アーリーアクセス版が配信されている『MINDHACK』(Steam)の開発者の一人でもある紅狐氏が手掛けたADV、『DON’T SAY YES』。
どんなゲームか
これはスマホでもPCでも遊べるブラウザゲームで、無料で配信されており、10分ほどでクリアできるアドベンチャーゲームである。
物語が進行すると選択肢が出てくるのだが、プレイヤーが選べるのは「YES」か「NO」のどちらかのみである。
そしてタイトル通り「YES」と言ってはいけない。
即バッドエンドとなってしまうのだ。
ゲームを続けてストーリーの行く末を見届けるには、ひたすら「NO」を選んでいく必要がある。
あらすじ
乗っていた宇宙船が月に墜落して、主人公は死にかけている。
生命維持装置はあと5分しかもたないと告げていた。
そこへ現れたのは月に住む悪魔である。
肉体をもたない存在である悪魔は、主人公の命を助ける代わりにその体に入り込ませるよう迫ってくる。
しかし主人公はきっぱりと「NO」と言う。
悪魔はなだめたりすかしたりして「YES」と言わせようとしてくるが、ひたすら「NO」と言われてだんだん調子が狂ってきてしまい、しまいにはやたらと親身になって主人公の身の上話を聞き始めるのである。
主人公の境遇はかなり込み入っており、聞いている悪魔と一緒にプレイヤーも「え?どういうこと?」と何度も驚くことになる。
その真実とこの物語の行く末には約10分でたどり着けるので、ぜひ自分の目で見てもらいたい。
ゲームボーイ風の作品
『DON’T SAY YES』にはゲーム本編とは別にあとがきがあり、それによれば本作はゲームボーイ風の作品を制作できる『GB studio』というソフト(?)を使って作られているということで、使われている文字はGBと同じくひらがなとカタカナのみである。
ちなみに自分はGBを持っていなかったので、当時のゲームに関する知識がほぼなく、本作をプレイして逆に「GBってこういう感じだったのか」と知ることになった。
一見簡潔な文章でも、ここまで奥深いテーマを語ることができ、プレイヤーを話に引き込み心を揺さぶることができるのだということに正直驚いている。
制作者である紅狐氏の言葉のチョイスや、キャラクター造形の巧みさには舌を巻くばかりだ。
本作はほぼ3日で作り上げたらしい。
言われてみればビジュアル面にしてもプレイ中はずっと悪魔の正面カットが表示されているのみだったりと必要工程を最小限に抑えていることが分かる。
だが、それだけでも十分だと思わせる力がこの作品にはあったのである。
先にも述べたように自分はGBで遊んだことがなかったので、この作品のスタイルに懐かしさや「こういうのを求めていた」という感情を抱くことなくプレイした。
それはある意味ダイレクトにこの作品の良さにふれたとも言えるのかもしれない。
そして、このシンプルな作品がここまで面白いと感じられたことで、ゲームというものの可能性についても少しばかり考えた。
AAAでもインディーでも面白ければOK
自分はアドベンチャーゲームが好きだが、AAAのオープンワールドゲームもプレイするし、その楽しさも十分知っている。
大企業が手掛けた贅沢な作りの作品も、個人製作の小規模作品も、どちらもプレイヤーという立場から言わせてもらうと等しく一本のゲームであることには違いはない。
そもそも、そこには優劣などないのだと自分は思う。
ゲームに対して何を求めるのかはプレイヤーによって異なるだろうが、少なくとも自分にとってはストーリーでも斬新なゲームシステムでも、短時間でも夢中にさせてくれる何かがあれば、それはいい作品なのである。
本作はゲームメディアの記事でも知っていたが、今回プレイするきっかけになったのはある個人の方のtweetであった。
これからもアンテナを広げて、AAAでもインディーでも面白いゲームに出会えるように情報収集していきたいと思ったきっかけとなった『DON’T SAY YES』だった。