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魔女占いADV『The Cosmic Wheel Sisterhood』ネタバレなしクリア感想

『The Cosmic Wheel Sisterhood』(Devolver Digital/Steam/Switch/2023年)は魔女フォルトゥーナとして人々の運命を占いつつ宇宙の命運に大きく関わっていくパーソナルなようでいて壮大でもある不思議な味わいのADVである。

 

開発元はサイバーパンクバーテンアドベンチャー『The Red Strings Club』と同じDeconstructeamであり、自分は『The Red Strings Club』は未プレイであるが、赤みが強い色調などグラフィック表現において共通するものを感じた。

 

 

 

 

 

ストーリー

宇宙を舞台としたストーリーであり、主人公である魔女フォルトゥーナがコミュニティである「コヴン」から1000年間追放される罰を受け、蟄居生活を強いられて200年が経過したところから物語は始まる。

一人孤独に過ごしてきた彼女の精神は限界に来ており、禁忌の術を使ってベヒモスであるエイブラマーを呼び出し契約を交わす。

 

 

その後、人々との交流が許可されたフォルトゥーナの元を、魔女仲間たちが訪れるようになる。

エイブラマーの力を借りてオリジナルのカードで占いができるようになったフォルトゥーナは、彼女たちと語らいつつ相談に乗り、その悩みを解決するべく腕を奮うのである。

 

 

 

選択肢を創り出すユニークなシステム

『The Cosmic Wheel Sisterhood』の最大の特徴は”自分で選択肢を創り出す”という体験なのではないかと考えている。

 

占いに使われるのは、主人公フォルトゥーナ(プレイヤー)が作成したオリジナルのカードである。

イメージとしてはタロットカードが近いだろう。

背景、メインのモチーフ(人など)、サブモチーフ(小物)を選び、それを組み合わせてカードを作る。

 

絵柄によってカードの持つ意味合いは異なり、複数提示されるのだが、ポジティブな意味ばかりのものもあれば、不吉なもの、相反する象徴を表しているものもある。

 

 

 

主人公は相談者の悩みを聞き、たとえば「恋愛の行く末」など占うテーマを決めてからカードをシャッフルして一枚を選び出すのだが、これは完全にランダムとなっている。

この部分は本作において唯一と言っていいほど「運」が大きく関わる要素と言えるだろう。

そして、そのカードの持つ意味合いによって自動的に複数の選択肢が提示されるため、最適と思われる回答を選び、相談者に伝えるのが主人公(プレイヤー)の役割である。

 

 

 

占いについての考え

自分は占いは星占いくらいしか知らないし、そこまで信じているわけでもないのだが、それでも占いは人を幸福にするものであってほしいと思っている。

占い結果を聞いたことで相談者が落ち込んだり、不安になったり、相談に来る前よりも不幸になるならば、いっそ占わない方が良かったのではないかとすら考えてしまうのだ。

 

日頃からそう思っていたので、もちろん本作のゲームプレイにおいても最も相談者が幸せになりそうな、聞いて嬉しくなるような選択肢ばかりを選び続けた。

もちろん、カードがランダムに選び出される以上、必ずしも最善の選択肢ばかりが提示されるわけではない。

 

ただ、実証はしていないのだが、カード作成の際にできるだけ良い意味を持つモチーフを選ぶことでその札が象徴するキーワードがポジティブ寄りになるように思えた。

明らかに不吉そうな幽霊などのモチーフを避けていたため、比較的自分のゲームプレイにおいては平穏な選択肢ばかりが登場していたようである。

どの相談者も、おおむね占い結果に喜びながら主人公の元を後にしていくことが多かったので、こちらもうれしい気持ちでそれを見送ることができた。

 

 

 

ただのほっこり占いゲームではない

ここまでの説明から、「この作品は占いで人を幸せにしていくほっこりゲームなのだろうか?」と思う人もいるかもしれないが、実のところこのゲームはかなり”攻めて”いる。

中盤以降の展開はかなりアグレッシブであり、ゲームシステム的にもガラッと雰囲気の違った新しい要素が加わっていく。

そして今までは相談者が訪れるのを待ち受けているだけだった主人公も主体的に行動していくことになるのである。

ただ、「カードでの占い」というゲームプレイは最後まで作品の根幹であり続ける。

 

 

 

「Sisterhood」の意味

タイトル『The Cosmic Wheel Sisterhood』の「Cosmic Wheel」は作中にたびたび登場する単語「宇宙の輪」すなわち運命という意味だろうと解釈している。

 

そして「Sisterhood」の部分についてだが、本作にはベヒモスであるエイブラマーを除けば基本的に魔女しか登場せず、キャラクターは女性ばかりである。

主人公と彼女たち、あるいは彼女たち同士の間での友情、愛情、そして結束やライバル関係など、本作においてはいろいろな形での絆が描かれる。

それらは必ずしも友好的なものばかりではないが、クリアした今ではすべてをひっくるめての「Sisterhood」なのだろうという結論に達している。

 

「魔女」という言葉からイメージされる固定観念を打ち破るほど人間臭く、個性的なキャラクターたちのSisterhoodを、ぜひ楽しんでもらいたい。

 

 

 


最後に

本作は、プレイヤーが作り出したオリジナルのカードから生まれる選択肢のバリエーションの豊富さによって、それぞれが違うプレイ体験を感じられる奥の深いゲームである。

他のプレイヤーがどんな選択肢を選び、その結果どうなったのかをこれほど聞いてみたくなるゲームもそうそうないと感じている。

ぜひとも多くの人にプレイしてもらい、感想をブログやnote、SNSなどでシェアしてもらいたいと思うばかりである。