いま一部で人気沸騰中のゲームがある。
それは『セーリング エラ』というSteamで発売されたばかりのタイトルだ。
これがとてつもなく光栄の『大航海時代』フォロワーだという評判なのである。
なかでも『大航海時代4』を思い出す人が多いようだ。
自分は『4』はプレイしたことはないが、『大航海時代3』にかつて夢中になったことがあり、『セーリング エラ』のスクリーンショットに確かにその面影を感じることができた。
じっとゲーム画面を見ていると懐かしい記憶が次々に呼び起こされてくる。
せっかくなので、今回は『大航海時代3』(『大航海時代III Costa del Sol』)の思い出を語らせてもらいたい。
このタイトルは、もし「人生で一番影響を受けたゲーム」を挙げるとすれば筆頭となるほど、今の自分の趣味・嗜好に大きく関わる作品なのだ。
自分が世界史好き・船好きになったのは間違いなくこのゲームをプレイしてからである。
「世界地図帳」を攻略本がわりに
攻略本を手に入れるまで自分がゲームを遊ぶ際に手元に置き、参照していたのはリアルの「世界地図帳」である。
『大航海時代3』はリアル世界を舞台としたゲームであり、地理も(おそらく)現実そのままなので「~の街へ行け」と言われた際に、現実の地図帳でその街を探してその場所に向かうということが可能なのである。
今ならネットですぐ分かる情報だが、本作が発売された1996年当時はインターネットが普及していなかった。
それゆえに攻略法を模索した結果、家にあった「世界地図帳」を活用するという我ながらナイスなアイデアに行き着いたのである。
ゲームは地中海から始まるため、序盤はほぼヨーロッパ周辺とアフリカの西海岸を中心に航海をすることになる。
特にアフリカの地名についてはまったく見当がつかないため地図帳は大活躍し、常にアフリカのページが開きっぱなしになっていた。
あの頃が人生で一番アフリカの地図を見ていた時期だったと思われる。
スエズ運河のありがたみ
自分が『大航海時代3』をプレイしていて肌身に感じたのは、スエズ運河のありがたみである。
スエズ運河とはエジプトにある水路であり、地中海と紅海を結んでいる。
アフリカとアジアを繋ぐ重要な運河である。
自分はゲームを進めていくうちに、ある日「そろそろアジアを目指してみるか」と思い立った。
アジアで香辛料を買い付け、ヨーロッパでそれを高値で売って大儲けしようという狙いだったのである。
拠点となるポルトガルの街リスボンを出港した後、地中海を東へ向かい、何も考えずエジプトへ着いた。
そこでぴたりと手が止まった。
船が通れない。
そう、スエズ運河は19世紀にできた運河のため、16世紀の『大航海時代3』の世界にはまだ存在しなかったのである!
愕然として地図帳を眺めた。
つまり、ヨーロッパからアジアへ向かうにはアフリカをぐるっと回って行く必要があるのだ。
なんてこった、とんでもない道のりだ。
しかしやるしかない。
そして自分はアフリカの西海岸、喜望峰、東海岸――何度も補給を繰り返しながら、なんとかアジアへと漕ぎ出していったのだった。
大変な労力がかかった。
現代にスエズ運河があって、本当に良かったと思わざるを得ない経験だったのである。
もちろん香辛料はありったけ買い付けて、無事売りさばくことができた。
世界遺産に愛着をもつ
このゲームでは探索中に遺跡や名産、動植物などを見つけた際「発見物」として扱われることがある。
帰港して「発見物」を報告すると名声値やお金を得ることができる。
有名な世界遺産などは大抵この「発見物」になっており、専用イラストがあったり、ちょっとした会話イベントが起きたり、アイテムなどが手に入ったりする。
プレイした当時は知らない場所ばかりであり、自分はこのゲームで世界遺産を覚えたといっても過言ではない。
自分の中で一番印象的な世界遺産は、なんといっても「モン・サン=ミシェル」である。
フランスにある修道院で、潮の満ち欠けによって陸の孤島になるということで有名な世界遺産だ。(近年ではそこまで潮が満ちないようだが)
一番初めに受ける依頼として出てくる遺産なので、ゲームを繰り返し遊んでいるともうおなじみという印象があり、リアルでの知名度も高いのでTVでもよく登場する。
TV画面に「モン・サン=ミシェル」が映ると、「自分が発見した遺産だ!」という謎の感動を味わうことができる。
行ったことがあるという人は居ても、「発見したことがある」という人はそうはいないだろう。
思わずTVを眺めているうちに、名物のふわふわオムレツの存在を知るなど勉強(?)にもなってしまうのである。
最後に
『大航海時代3』をプレイして世界中を航海していくうちに、世界地図を把握し、歴史を覚え、世界史が好きになった。
よく『桃鉄』で日本の地理と名産に詳しくなったという話を聞くが、自分はその世界史バージョンをこのゲームで経験したわけである。
そして船も好きになった。
ディズニーシーが出来た際、自分がもっとも気になったのはアトラクションよりも港に停泊する船だった。
ゲームにおいて一番大型船であるガレオン船の「ルネサンス号」が、シーにあるのだ。
大変カッコよく、かつ美しいので行く人はぜひ見てみて欲しい。
自分の船好き活動はリアルな船を見に行く他にも、帆船模型の展示会に行ったり、船関係の小説を読んだりドラマや映画を観たりと、ゲームをプレイしてから年月が経っても未だに続いており、きっとこの先もずっと続くだろう。
最後に船好きとしておすすめ映像作品を3つ紹介したい。
大航海時代が舞台ではないので、あくまで船コンテンツとして参考にしてもらいたい。
1.『パイレーツ・オブ・カリビアン』
1月20日から金曜ロードショーで3週連続放送するらしい。
一作目に、ぜひ観て欲しいシーンがある。
主人公たちの乗るブラック・パール号と敵艦の戦闘シーンだ。
お互いの顔が見えるほど近くをすれ違い、砲弾を浴びせ合うド派手なバトルが個人的に大変アツい。
2.『マスター・アンド・コマンダー』
ラッセル・クロウ主演。19世紀イギリス海軍の艦長ジャック・オーブリーが知略を尽くしてフランスの神出鬼没の敵艦アケロン号を拿捕するまでの戦いを描いている。
なかなか捕まらないアケロン号との知恵比べ、手に汗握る白熱の戦いが見どころ。
艦内の人間関係などもかなりシリアスで骨太な作品。
3.『ホーンブロワー 海の勇者』(ドラマシリーズ・全8話)
動画サイトで配信されていることが多い作品。
18世紀イギリス海軍の士官候補生ホーンブロワーが知恵と勇気で困難を乗り越え、立身出世していくストーリー。
原作小説はイギリスで大変有名なシリーズのようだ。
リアルな描写が多いため、スカッとする終わり方もあればビターな結末に終わる話もあるが、いずれにせよホーンブロワーは最後は大抵うまくやる。
彼のサクセス・ストーリーを見守る気分で鑑賞するのもいいだろう。
自分も定期的に見返している。
さて、それではゲームの話に戻って終わりにするとしよう。
初めに挙げたSteamの『セーリング エラ』は夏にSwitch/PS4でも発売予定。
そして『大航海時代』シリーズとしては『大航海時代 Origin』(PC/iOS/Android)の日本語版トレーラーが公開され、公式Twitterが開設した。
こちらはMMORPGだというので、『大航海時代3』とはだいぶ雰囲気が違うだろうが、今後の展開を見守りたい。