はてなブログのお題が、自分に書けと言わんばかりのテーマ「私がハマったゲームたち」ということなので、大張り切りで参加してみることにする。
paiza特別お題キャンペーン「私がハマったゲームたち」
by paiza
今回とりあげるゲームは『ファイナルファンタジータクティクス(以下、FFT)』(スクウェア/PS/1997年)である。
「ファイナルファンタジー」とタイトルにはあるが、いわば外伝的な立ち位置の作品であり、ジャンルとしてはシミュレーションRPGとなる。
イヴァリースという世界で巻き起こった大陸全土を巻き込む「獅子戦争」。
その舞台裏で人知れず戦い続けたラムザという青年を主人公とした物語である。
人々の思惑が複雑に絡まり合う重厚な歴史絵巻にも惹きつけられたが、それ以上に自分を魅了したのはなんといってもバトルの面白さだった。
悪夢のゴルゴラルダ処刑場
自分はこの『FFT』で初めてシミュレーションRPGというジャンルにふれた。
初めこそとまどったが、ゲームを進めるにつれて、相手の動きを読んで自分の一手を決めていくという知恵比べのようなせめぎ合いが楽しくてたまらなくなってきた。
バトルにはストーリーイベント上発生するものと、ランダムに発生するものとがあるのだが、前者は敵のレベルが固定、後者は自分のレベルに合わせて敵も強くなる仕様である。
序盤はさほどレベルを上げていなかったので、イベントバトルは常にギリギリの戦いであった。
ドーターのスラム街では弓使いに苦しめられ、砂ネズミの穴ぐらではモンクの強さに絶望することもあったが、かろうじてゲームを進めていった。
しかし、大きな壁が立ちはだかった。
ゴルゴラルダ処刑場である。
敵が多い上、ボスが強く、そしてとにかく時魔道士が邪魔で仕方ないマップである。
ゲームオーバーになるたび作戦を練り直した。
手を変え品を変え思いつく限りのアイデアをすべて試してみた。
しかし、何度チャレンジしてもどうしても勝つことができなかった。
そして、悟った。
レベルを上げるしかない。
それまでほぼレベル上げをしないまま来たが、もう今のパーティー編成ではどうやってもこのマップはクリアできない。
これはもうとにかくステータスをあげて物理で殴るかアビリティを覚えて作戦を練るか、とにかくなにか変えないといけない――そう覚悟を決めたのだった。
しかし、そこにはまた別の残酷な現実が待っていたのである。
なんと、ゴルゴラルダ処刑場に突入するところまでストーリーを進めると移動が制限され、レベル上げができるのが「バリアスの谷」というマップ一択になってしまうのである。
このマップは真ん中に川が流れている高低差のある地形で、ユニットが動かしづらく、水の中は移動範囲が狭まったりととにかく手間がかかる。
そしてイカのような「マインドフレイア」という敵ばかり出てくるのである。
これがまたいやらしいことに中途半端に強かった。
自分は来る日も来る日も川の中をチマチマと移動しながらイカもどきと戦い、地道にレベルを上げていった。
砂を噛むような味気なさだったが、すべてはゴルゴラルダ処刑場をクリアするため。
その一心でイカを斬り続けた。
そしてついにその日が来た。
何度目か分からないゴルゴラルダ処刑場への挑戦。
繰り返し戦ったため、自分が取るべき最善の手はある程度固まりつつあったが、ランダム要素が常に自分を苦しめてきた。
そのためいくらレベルを上げていても「やるかやられるか」という緊張感は変わらなかった。
相手の予想外の動きに肝を冷やしながら、祈るような気持ちで自ユニットが敵に与える攻撃ダメージ値を見つめ続けた。
そして画面には『CONGRATULATIONS!』の文字が表示された。
ついにゴルゴラルダ処刑場をクリアした瞬間だった。
もう時魔道士のヘイストに歯ぎしりすることも、ガフガリオンの「闇の剣」の威力に文字通り目の前が真っ暗になることもない。
そして、レベルをあげるために腰まで川に浸かってイカもどきと戦い続けなくていい。
ようやくストーリーを進め、他のマップ、他の敵と戦える。
目の前に新しい世界が広がっていくような、この上ない解放感を味わったのであった。
これが自分の答えだ。二刀流忍者参る!
ゲームを進めるうちに、いつしか自分は否応なしにしていたはずのレベル上げにハマっていった。
本作にはジョブチェンジシステムがあり、複数ジョブを一定レベルまであげることで上位ジョブが解放される。
初めは全ジョブの獲得を目指して戦っていたのだが、その目標を達成すると、今度はアビリティの習得を目指すようになった。
アビリティを覚えたら今度は成長率の高いジョブでのレベル上げ、お金稼ぎ……などなど、ストーリーそっちのけで戦いに明け暮れた結果、自ユニットはレベル固定のイベントバトルの敵をはるかにしのぐほど強力になっていた。
余裕のあまり、全員をシーフにして「盗む」を覚えさせ、敵を四方から囲んで装備品を全て盗み、所持金も奪い取ってから倒すなどという悪逆非道なプレイもしていたほどだ。
レベル上げは主に「ゼクラス砂漠」でしていた。
このマップは高低差がほぼ無いため移動範囲が制限されることがなく、先の「バリアスの谷」と比べたら非常に快適に戦えるのだ。
ここでよく出てきた「牛鬼」も「ためる」に注意すればそこまで強敵というわけではなかった。
中盤まで重宝したジョブは、モンクだった。
とにかく「地烈斬」という地上にいる敵を縦一列を攻撃できる技が使いやすく、巻き込まれないよう味方全員に「レビテトシューズ」という宙に浮く靴を履かせてこれを連発していた。
しかし、忍者の登場で風向きが変わった。
スピードが早い上、「二刀流」というアビリティを覚えると二回攻撃ができるようになり、そこに大枚をはたいた強力な武器を持たせると、まさに向かうところ敵なしとなったのである。
最強ジョブ、有効ジョブがどれかについてはプレイヤーごとに異なるだろうが、自分のプレイスタイルに最適だったのは忍者であったのだ。
戦慄!チョコボ軍団
忍者軍団を引き連れ、どんな敵が来ようと負ける気がしないと高をくくっていたある日、”ヤツら”は現れた。
ランダムバトルを繰り返しレベル上げをしている頃立ち寄った、とあるマップでの出来事だった。
バトルが始まり、全景が映ると丘の上に、赤チョコボ黒チョコボがズラーーッと並んでいたのだ。
恐怖が背中を這い上がってくるのを感じた。
きっと顔から血の気も引いていたに違いない。
初めに、ランダム発生するバトルは自分のレベルに合わせて敵も強くなる仕様だと書いた。
つまりレベルを上げまくった自ユニットと同じくらいこのチョコボ軍団は高レベルだということだ。
赤チョコボは「チョコメテオ」黒チョコボは「チョコボール」という超強力な技を持っている。
下手をすれば一撃死もありうる威力なのだ。
一体出てくるだけでもかなり凶悪な敵だというのにそれが束になってかかってくる……。
もはや余裕の色など無かった。
必死で息を整え、思考を巡らせる。
こちらの忍者軍団が上回っているのはなにか。
それはスピードである。
とにかくやられる前にやるしかない。
速さを活かしてチョコボを一斉に取り囲み、「二刀流」をお見舞いする。
しかし相手もハイレベル、すぐに倒すなどということは出来なかった。
身の毛がよだつようなチョコメテオとチョコボールが、最強のはずの忍者たちを襲い高ダメージを与えていく様は悪い夢でも見ているかのようだった。
肉を斬らせて骨を断つ――まさにそのような戦いだった。
かなりの痛手をこうむりながらも忍者軍団は勝利をもぎ取った。
敗北の二文字が脳裏をよぎったのも一度や二度ではなかった。
しかし、忍者ならではのスピード、そしてこれまで積み重ねてきたレベル上げの日々で身につけたアビリティの数々がここで成果を発揮してくれたのだ。
正直、レベルを上げきってから、ここまで紙一重の戦いを繰り広げたことはなかった。
慢心していた自分に喝を入れてくれたのがチョコボ軍団だったのだ。
そして思い出させてくれた。
ギリギリで勝つ喜びを。
ゴルゴラルダ処刑場をクリアした時のような純粋な感情を、再び胸に抱く日が来るとは思わなかった。
『FFT』って本当に面白い……!!と改めて感じた一戦であった。
そして、エンディング
それからもサブイベントや儲け話、何度も「始末する」でバッドエンドを迎えてしまうADV的なミニゲーム「ウイユヴェール」などを楽しみ、やることはすべてやったと気が済んでから自分はラスボス戦に挑んだ。
エンディングを見ながら、思い出すのはやはり苦労した序盤のバトル、そしてレベル上げの日々だった。
勝つか負けるか分からない瀬戸際の駆け引き、クリアした時の達成感。
特に苦労したゴルゴラルダ処刑場の名前は、おそらくこの先も忘れることはないだろう。
そして徐々に強くなっていき、自分なりのセオリーを築き上げていくことがこの上なく面白く、時間を忘れてプレイした。
自分のゲーム人生でも一、二を争うほど長時間遊んだタイトルなのは間違いない。
『ファイナルファンタジータクティクス』は、シミュレーションRPGというジャンルに出会うきっかけとなった一作であり、初めて触れたファイナルファンタジーでもあった。
このゲームをプレイした思い出は、今でも自分の中でホーリーよりも輝いている。