『Return of the Obra Dinn(オブラディン号の帰還)』(PC/PS4/Switch/X box One/2018年(PC)/2019年)は、一人称視点のミステリーアドベンチャーゲームである。
本作は個人開発者Lucas Pope氏が手掛けたインディーゲームであり、同氏が手がけた『Papers, Please』が8月5日にiOS/Androidにて発売されたばかりである。
両作品には直接の繋がりはないが、これを機にぜひとも『Return of the Obra Dinn(オブラディン号の帰還)』の面白さを知ってもらいたいと思い、この記事を書くことにした。
高難易度ミステリー
本作はPC(Steam)で発売された当初から「難しい」と評判になっていたゲームである。
アクション要素や時間制限は一切なく、自分のペースでプレイできるアドベンチャーゲームであり、難しさはあくまで「いかに推理を導き出すか」という一点に絞られている。
ユニークな設定、インパクトのあるビジュアル、そして自分が好きな「船」がメインのゲームということで、PS4版が出てすぐにプレイした。
どういうゲームか
舞台は1802年のイギリス。
ロンドンから出港したのち消息不明となっていた商船「オブラディン号」がある朝突然、ファルマス港に姿を現すところからゲームは始まる。
幽霊船のようにボロボロになった船体、数名の亡骸を残して姿を消した乗組員たち。
明らかにただならぬ様相であり、「オブラディン号」で恐ろしいことが起こったのは間違いなかった。
プレイヤーは東インド会社の保険調査官となって損害査定書を作成するため、「オブラディン号」で何があったのかを調査するべく船に乗り込むのである。
保険調査官として「お仕事」するのみ
対象者の死の瞬間まで時間を遡ることができる不思議な懐中時計を手に、プレイヤーは過去と現在を行き来する。
そう聞くと、船に起こった悲劇を回避するためにタイムリープを繰り返すゲームなのかと思うかも知れない。
しかしプレイヤーにできるのは時間が静止した過去の世界を歩き回り、乗組員たちの死の現場をただ「見る」だけなのである。
起こったことを変えることは一切できない。
あくまでプレイヤーは保険調査官として、60名の乗組員全員の身元および死因を特定するのが目的なのである。
尖ったビジュアル、モノクロの世界
この設定だけでも十分個性的なゲームだが、ビジュアルもかなり特徴的だ。
すべてが1ビットで表現されており、船も人物もなにもかもがモノクロなのである。
自分は外国の古い本の挿絵や銅版画を思い出した。
本作には凄惨な事件現場が次々に登場するのだが、それらも白黒で描かれているためグロテスクさはかなり薄らいでいると感じた。
ドットの集合体として表現された血飛沫や、絶妙に影になって黒く塗りつぶされた死体の切断面などは、凝視しても生々しさはなく、どこかサラリと乾いた手触りである。
そして何よりも、プレイヤーには死因を特定するという役目があり、目の前にあるのはただの死体ではなく、その身に解き明かすべき謎をまとった死体である。
次第にどんな衝撃的な光景が繰り広げられていようと、冷静に事件現場を眺めることができるようになるだろう。
印象的な効果音と音楽
3人分の身元と死因を特定するとゲームが進行するのだが、その時に流れる「ジャジャン!!」という効果音は気分を高揚させてくれる。
新しい章が始まる時に流れる曲も、どこか不吉で謎めいた、耳に残る旋律である。
淡々と進むゲームプレイの中でこれらはいいアクセントになってくれた。
プレイ後の感想
本作は確かに難しかった。
しかし、とてつもなく面白かった。
プレイ時間は10~15時間ほどであったが、中身がぎっしりと詰まっており、エンディングを迎えたときには大作ゲームをクリアした時と同じくらいの充実感があった。
自分は攻略を一切見ずにプレイした。
途中どうしても分からずに総当りで進めた場面もあるが、自力で「オブラディン号」の真相にたどり着くことができてホッとしている。
最後に
難しいミステリーゲームを探している人、自分のペースでプレイできる3Dアドベンチャーゲームを探している人、
そしてこの夏、無人の難破船で肝試しがしてみたい人も、ぜひとも『Return of the Obra Dinn(オブラディン号の帰還)』を遊んでみてほしい。