春アニメ『シェンムー・ジ・アニメーション』第6話が配信された。
ここでは原作ゲームを最新作『シェンムーⅢ』まで全てクリア済みの自分から見た、アニメ版の感想を語っていこうと思う。
第5話の感想はこちら。
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第6話ではついに香港へたどり着いた涼が、陳大人から紹介された桃李少老師の居所を探すために奔走する。
イベントも初登場のキャラクターも盛りだくさんな回である。
広東語を話す涼
ジョイのセリフから、涼の使う中国語は広東語だということが明らかになる。
よく見れば涼が手に持っている緑色の本の表紙にも「広東語講座」の文字が読み取れる。
おそらくこの本は、以前ドブ板で中国語の手紙を読める人を探す際に、古書店で涼が手に取っていたものかと思われる。
原作に登場しない古書店が映ったことがずっと不思議だったのだが、あのタイミングで本を手に入れたということを描きたかったのだろう。
香港行きのチケットを探すために訪れた旅行社でも、この本を片手に店員と話す姿が確認できた。
陳大人との別れのセリフも中国語だった。
ゲーム版では香港行きの船の中で中国語を覚えたことになっていたが、横須賀にいる段階からすでに勉強しているという設定の方がたしかにしっくりくる気もする。
この「広東語講座」は後の毒蛇兄弟とのバトルでビリビリに破れてしまうが、その頃には涼は広東語をほぼマスターしていたようでどうやら問題はなさそうで一安心だ。
戦うクールJを二度見。大事なラジカセ
涼のバッグを奪ったウォンと手を組んでいた3人のうち、一番大柄でラジカセを担いだサングラスのキャラクターがクールJである。
ゲームでは非戦闘員としてひたすら逃げる姿が描かれていたが、アニメでは戦う気満々で回し蹴りを放ってくる。
顔つきもどことなく厳つくなっているように感じられる。
ゲーム版のクールJは肩に担いだラジカセを大切にしており、選択肢次第で見ることができるラジカセを巡る涼とのコミカルなやりとりはインパクトがあり、必見だ。
『シェンムー』におけるラジカセの位置づけは、時代の最先端を行くおしゃれなアイテムということなのだろう。
アニメでは涼の部屋の机の上にすでに置かれていたが、ゲームではコンビニや駄菓子屋で引けるくじで当たりを出さないと手に入らないレアなアイテムだった。
くじを引き当てた時はうれしく、カセットテープを買い揃えて次々に曲をかけてみたものである。
クールJがラジカセを後生大事にする気持ちも分かるように思えてくる。
ジョイの過去
香港編のヒロイン的存在となるのがジョイだろう。
彼女の出番もゲーム版よりも増えており、香港のシビアさを語る際にはアニメオリジナルとなる幼少期の場面もちらりと映った。
父については港の大物という設定が明かされているため、これはまだ語られていない彼女の母親に関するエピソードではないかと自分は予測した。
ジョイの声優はゲームとは違う人なのだが、違和感はまったくなかった。
サバサバした話し方や「アタイ」という一人称などを聞いていると、これこそジョイだという気持ちになってくる。
涼とジョイとの関係性の描き方はゲーム版よりも親しさが増しているように感じられた。
宿を紹介してくれたジョイに心のこもったお礼を言う涼の姿は、ゲームで彼女に一貫してつれない態度を取っていたことを考えればかなり友好的になったように見える。
部屋を無事とれたかを見届けるためしばらくその場に残っていたジョイに対して、涼が自ら名を名乗ったことには驚いた。
アニメでは涼がジョイに対して心を開きつつある様子が描かれており、旅の目的など、自分の考えを彼女に伝えるために言葉を惜しまないのが印象的だ。
そして、ジョイもそんな涼に対して興味を持ち始めたそぶりを見せている。
2人がどれだけ親しくなっていくのか、そしてジョイにどんな過去があるのか、アニメ版での今後の描かれ方に期待したい。
地味にうれしい毒蛇兄弟の出演
毒蛇兄弟といういわばマイナーなキャラが登場したことに原作ファンとしてちょっとうれしくなった。
顔立ちも服装もほぼゲーム版を踏襲していて、言いがかりでしかない絡み方も含めて彼らのゴロツキ感がアニメでもあますことなく表現されていた。
そもそも、あだ名なのか自ら名乗っているのか分からないが「毒蛇兄弟」というネーミングにはちょっと笑ってしまうドギツさがある。
思いのほか出番が長く、ジョイの口からわざわざその名前まで明かされたので、もしかすると再登場して次こそは決着がつけられるかもしれない。
武徳を知り、父の無実を改めて信じる
桃李少老師を探す中で涼が訪れた公園には、木の下で太極拳をする老人という、日本人が思い描く中国のイメージそのもののような光景が広がっていた。
『シェンムー』における多くの老人がそうであるように、この建民さんも一芸に秀でた強キャラである。
涼が本気で打ち込むが、すべての攻撃を避けてしまう。
この熱い展開に自分のように燃える人も多いだろう。
建民さんが教えてくれる「小擒打(しょうきんだ)」という技を習得するのに涼はかなり手こずる。
これまで山岸さんや貴章に技を習う場面では、それほど苦労した様子は見受けられなかった涼が、ここまで時間をかけるのは初めは意外に思えた。
だが、涼が小擒打を習得するために鍛錬を積み重ねる描写は、武徳の一つ「功」を表現するために必要だった。
そして同時に、父が芭月流柔術を磨き上げるため、日々たゆまぬ努力をしていたことを改めて思い出すためにも無くてはならないものだったのである。
涼の旅の目的は、事件の真相を解明することであり、そして父が本当はどういう人物であったのかを知ることである。
真摯に修行に打ち込んでいた父の姿は、清廉潔白な人物であることを証明してくれる一つのヒントとなり、無実を信じる涼の心に明るい希望の光を灯した。
建民さんに芭月流柔術について語る涼の口調には、父のことを誇らしく思う気持ちがあふれており、晴れ晴れとした表情は見ていて温かい気持ちにさせられた。
第6話ラストでは桃李少老師の正体が明かされ、そしてレンも登場する。
レンのセリフは短かったが、声優は変われどあの独特のガラの悪さがうまく再現されているように感じられ、喜ばしい限りだ。
第7話も楽しみに待ちたい。