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【読書】『ご本、出しときますね?』小説家たちの個性爆発、おもしろトーク番組の書籍化

この番組をリアルタイムで見てみたかった



この本はBSジャパンで放送された番組、『文筆系トークバラエティ ご本、出しときますね?』を書籍化したものである。

 

元となる放送内容は、オードリーの若林正恭氏が司会を務め、小説家2名を招いて行われるトークバラエティであったようだ。

そんな面白そうな番組があるならぜひ見てみたかった。

 

とはいえ、この本では小説家が話したトーク内容が(おそらく)そっくりそのまま載っているため、放送を見逃した自分にもそのライブ感を味わうことができた。

 

 

・若林氏のファンになりそう

登場する小説家2人は元々若林氏と知り合いであったり、互いが顔見知りであったり、知り合いの知り合いだったりと、とにかく何らかの形で関係性のある人選がなされている。

 

そのため雰囲気は和気あいあいとしており、時には暴走しそうなほど盛り上がる中、若林氏の適切なツッコミが入れられ上手くまとまりを見せているという印象を受けた。

 

自分はあまり若林氏の出演するテレビを見たことがなかったのだが、この本で彼の有能司会ぶりを目の当たりにし、なんだかファンになってしまいそうである。

 

 

・小説の方が作家より頭がいい

番組では小説家同士が互いに聞きたいことを事前にいくつかピックアップし、それをテーマにトークするという流れであったようだ。

 

内容は互いのプライベートのことから執筆に当たっての心構えまで様々であるが、いずれのエピソードも小説家ならではの豊かな語彙と絶妙な表現で巧みに語られており、作家自身および彼らの著作にも興味が湧く。

 

その中でも『サイドカーに犬』『猛スピードで母は』などの作品で知られる長嶋有氏の、「その人の書く小説のほうが、その作家より頭がいいと思う」という発言が目に留まった。

文章は推敲していいものを選んだアウトプットだから、絶対に作者より頭のいいものになるのだという。

 

自分は長年、小説は作家の知性の範疇でのみ書かれたものだと思っていた。

登場人物の知性=作家の知性ということである。

例えば天才であるという設定のキャラクターがいた場合は、作家もそれなりに賢いのだと単純に考えていた節がある。

 

だが長嶋氏の言葉を考えるならば、天才キャラクターが話しているセリフは小説家がリアルタイムで話す内容とはもちろん違っていて、用意周到に準備されたものだから普段の作家以上に賢い発言内容であっても当たり前ということである。

考えてみればそのとおりなのだが、改めて言葉にされると自分にとってはわりと目からウロコの発言であった。

 

 

・著名人が本を推薦すること

本の帯に書かれている推薦文の話も興味深かった。

あれは出版社が頼んでいるのだと思っていたが、作家が指名することもあるらしい。先ほどの長嶋有氏はキリンジというバンドのメンバーに書いてもらい、結果としてそのファン層にも手にとってもらったと話している。

 

自分はゲーム好きなのだが、書店で行われるフェアで、有名なゲームクリエイターである小島秀夫監督の「ヒデミス!小島秀夫監督が選んだ2021 ミステリー・ゴールデン・ダズン」が開催された際には、思わずラインナップを確認してしまった。

 

その中で実際に読んだ本もあるので、販促に業種をまたいだ著名人を起用することも有用なのだと実感できる。

 

 

・最後に

今まで小説家というのはいわば「書く」ことが得意な人たちであり、「話す」ことが上手であるとは限らないと思っていたのだが、この番組に出演した作家たちは見事にそれを両立させている人ばかりであった。

 

小説家ならではのハッとするほど秀逸な言い回しで語られるエピソードは興味深いものばかりで、バラエティとしても面白いものであった。

 

番組の最後にはタイトルの『ご本、出しときますね?』の元ネタであろう医師の「お薬、出しときますね?」から想起される薬の処方のように、2人が話したテーマをもとに、「〇〇な人におすすめの本」と題して作家が推薦図書をチョイスして終わる。

 

挙げられた作品はどれも気になるものばかりで、何から読もうか絶賛検討中である。