鈴木の既読スキップ

なつかしゲームから最新ゲームまでアツく語る!

今週のお題「SFといえば」 高畑京一郎『タイム・リープ あしたはきのう』青春SFの金字塔!

今週のお題「SFといえば」

すべてのピースがはまる完璧な時間SF

自分にとっての最高のSF小説と言ったら、なんといっても高畑京一郎氏のタイム・リープ あしたはきのう』メディアワークス/1995年)である。

今でも数年おきに読み返したくなる名作であり、何度読んでもその鮮烈さは色褪せない。

かなり昔の作品であるが、嬉しいことに現在でもKindleで読むことができる。

 

 

さて、この小説の何がそこまで自分を惹きつけてやまないのかと言えば、時間SFとしての完成度の高さである。

矛盾なく組み立てられた構成は見事で、「美しい」と称したいほどだ。

 

ストーリーの始まりはこのような感じである。

 

主人公であるごく普通の女子高生、鹿島翔香(かしましょうか)はある日、自分が時間を跳びこえる能力を手に入れてしまったことに気がつく。

とある理由からクラスメイトの若松和彦(わかまつかずひこ)がそれに関わっているのではないかと思った翔香は、それまでほとんど交流がなかった彼に話しかけるのだが――。

 

 

この話はSFであると同時に高校を舞台にした青春ものでもあり、主人公翔香は自分に突然目覚めた力にとまどいながらも授業を受け、友人と昼食を食べ、回ってきた掃除当番の仕事をこなす。

普遍的な高校生の日常を描いているが、90年代に書かれた作品のため、携帯電話やスマホが登場しない点が今とはだいぶ異なるだろう。

 

90年代の学生生活へのノスタルジーがわき起こる

 

クラスメイトの和彦は優等生かつクールな性格のせいか、どこか孤高の存在として扱われており、勇気を出して話しかけた翔香にもひどくそっけない態度をとる。

理詰めでものを考えるタイプである和彦に、翔香が自分の超能力を証明するためにとった「学生ならでは」の方法は、本作一番の見どころと言ってもいいだろう。

物語の進行とともに変わっていく二人の関係からも目が離せない。

 

 

とはいえ、このストーリーはサブタイトルの『あしたはきのう』の通り、時系列順に進行するのではない。

翔香は時間を跳躍してしまうという能力の特性上、昨日起こったことを知らなかったり、逆に明日起こることをすでに知っていたりする。

この設定を活かした構成が非常に見事であり、フローチャートを書きながら読みたくなるだろう。

 

 

ここまで語ってきたが、本作の面白さの真髄は、自分がいくら言葉を尽くしても伝えきれるものではない。

時間SF好きの人、青春SF好きの人にはぜひともタイム・リープ あしたはきのう』を実際に手にとって、この知的興奮を味わってもらいたい。

現在Kindleにて上下巻で発売されており、上巻は480円、下巻は528円である。

また、本作はKindle Unlimited対象作品にもなっている。

 

ゲームイベント『バディミッションBOND 大抗争!ミカグラカップ』が楽しみで仕方ない!

どんなストーリーなのかワクワクが止まらない!

 

本日7月21日の昼、『バディミッションBOND』公式Twitterに突如ある告知が掲載された。

それはゲームイベント『バディミッションBOND 大抗争!ミカグラカップ開催のお知らせであった。

昼食もそこそこに、自分はつぶさにその詳細を確認した。

詳細は公式Twitterを参照してもらいたいが、簡単に書いておく。

 

 

『バディミッションBOND 大抗争!ミカグラカップは9月24日(土)昼夜2公演で行われる朗読劇であり、有観客&オンライン配信ありのイベントとなる。

会場はKT Zepp Yokohama。

コーエーテクモゲームスの本社がある横浜である。

ゲーム未収録の幻のミッションをゲームライターが書き下ろしたストーリーになるという。

 

 

イベントサイトは8月4日(木)2週間後にオープンするというが、待ち遠しくてたまらない。

そのため現在判明しているイベントタイトルから内容を勝手に予想してみることにした。

 

まじりっけなし100%ただの想像

 

まず、「大抗争!」の「」からなんとなくコミカル、明るいノリのストーリーなのではないか?という印象を受けた。

「温泉回」の通称で知られる『BOND温泉旅情』の亡霊騒動のような雰囲気なのではないだろうか。

そして「抗争」という言葉の意味を調べてみると、「勢力争い」を指しているようだ。

つまり、いくつかのグループに分かれて対抗しあう内容であると予想される。

そうなると、それなりの人数が必要になると考えられる。

以前のイベントで、「今後のイベントではチームBOND4人以外の登場人物も出演できるといいですね」という話が出演者から出ていたことも考えると、今回はサブキャラクターたちも登場するのではないだろうか。

 

 

ミカグラカップ」おそらくこれを勝ち取るために戦うことになるだろうが、島の名前を冠するところからしても、ブロッサムとマイカ両方の人々が登場することが予想される。

とはいえ融和をテーマに描いている作品上、ブロッサムVSマイカという構図にはおそらくならないだろう。

双方のキャラクターを織り交ぜて、複数のグループを構成するのではないだろうか。

 

 

ミカグラカップ」という名前からはどこかスポーツ的なスピードを競う内容が連想されるが、『バディミッションBOND』のサブキャラクターには老若男女がおり、それぞれに見せ場があった。

もしスポーツだけにしてしまうと高齢キャラの出番が減る可能性が高いので、これは意外と折り紙とかそれこそ温泉回のカタヌキのような年齢に関わらない技術的な方法での競争になるかもしれない。

 

ブロッサム大温泉郷のエピソードを思い返すと、卓球や射的などがあった。

作中ではコマもキーアイテムとして登場する。

「BONDミュージアム」にはゲームプレイとしてはなかったが手裏剣を使うアトラクションもあった。

キャンディの食べ方は分かるかい?

 

そう考えると種目は1種類には限らないのかもしれない。

器用さが必要な競技と、スポーツを取り混ぜてそれぞれ得意なメンバーが出るという構成でもいいだろう。

チームBONDでいうと器用さはチェズレイ、体力はアーロンが担当になるだろう。

おのおの見せ場がふんだんに用意されていて、しかし思わぬサブキャラクターがチームBONDを圧倒したりするのも面白いだろう。

 

そもそもチームBONDもバラけた方が面白いかもしれない。

4人がチームのリーダーになって「チームドギー」「チームビースト」などで対抗戦になっても面白いだろう。

 

子どもからお年寄りまで楽しむ大抗争!であることを期待したい

 

さて、これらの予想が合っているのか、それともまったく違うのか。

8月4日(木)のサイトオープンで明らかになるのを期待したい。

『バディミッションBOND』のライターさんたちなら、素人の予想など飛び越えたとびきり面白いストーリーを見せてくれるのは間違いないだろう。

 

とにかくイベントを開催してくれる事自体がもううれしくて仕方ない!

『バディミッションBOND』にどこまでもついていく所存である。

 

スクエニ色に染まる秋!発売が楽しみな3作品

秋、それはスクエニの季節

ゲーム情報をチェックしている人なら、このところのスクエニの勢いに気づいているだろう。

完全新作ゲームに、シリーズ最新作。

振り落とされそうなほどのスピード感でスクエニは次々にゲームニュースを公開し続けている。

2022年秋以降のゲームプレイスケジュールがスクエニ作品で埋まってしまったという人もいるかもしれない。

自分もすでにそうなりそうな予感がしている。

 

 

スクエニの活躍のはじまり

個人的には昨年からスクエニの快進撃は始まっていたと感じている。

『ダンジョンエンカウンターズ』とVoice of Cards ドラゴンの島』。

あまりプレイした人はいないかもしれないが、それぞれ独特の魅力がある作品だった。

ジャンルとしてはRPGだが、どちらもビジュアルが尖っていて、スクエニがこういったゲームを出したというのが個人的にはとても驚きであった。

そして「スクエニ面白い!」と感じてさらに注目するようになったきっかけの作品でもある。

 

 

2022年のスタートダッシュ

2022年前半は、『トライアングルストラテジーライフ イズ ストレンジ トゥルー カラーズ』『春ゆきてレトロチカ』が発売された。

3作とも長いこと注目してきた作品であり、現在『春ゆきてレトロチカ』をプレイ中である。

他2作についてもいずれプレイするつもりであり、自分のゲームプレイスケジュールはこの時点ですでにかなり充実していると言えるだろう。

 

 

この秋注目の3作品

それでは今回の本題、この秋発売されるスクエニ作品について語っていきたい。

個人的に気になっているのは、

『ディオフィールドクロニクル』

『ヴァルキリーエリュシオン』

『ハーヴェステラ』

の3作である。

 

 

『ディオフィールドクロニクル』

渋めのイラストで大人を狙い撃ちしているのではなかろうか

 

『ディオフィールドクロニクル』について見ていくと、ジャンルとしてはSRPGと言って良いのだろうか。

リアルタイム要素があるようで、まだシステムを完全には理解できていないのだがパッと見は歯ごたえの有りそうな印象を受ける。

国盗り合戦に巻き込まれていく伝説の傭兵団を中心に描くストーリーのようだ。

 

一番注目しているのは魅力的なキャラクターがいるかという点であり、渋めの色使いのキャラデザが個人的にかなり好みであるということもあって期待している。

ゲーム中はジオラマ風のデフォルメがされた3Dキャラクターになるので少し雰囲気は変わるが、それも味があっていい感じだ。

HPでは続々と新キャラクターがお披露目されており、誰が仲間なのか敵なのか分からないながらも、魅力的な登場人物ばかりだと感じている。

メイン4人の中でも主人公格に扱われているアンドリアズが知略に優れた策士系のキャラクターで、魔術師というのも珍しい気がする。

さらなる情報を楽しみに待ちたい。

 

2022年9月22日発売予定、PS/Switch/Xbox/PCと気合の入ったマルチ展開を見せている。

 

 

『ヴァルキリーエリュシオン』

『ヴァルキリーエリュシオン』は『ヴァルキリープロファイル』シリーズの最新作となる。

このブログの一番初めの記事は、実はこの作品が発表された時に勢い余って書いたものであり、そのため自己紹介などは一切しないままブログがスタートすることになった。

過去作についても書いてあるので、時間があったら見てもらえればうれしい。

 

gameandbooknadonado.hatenablog.com

 

さて、『ヴァルキリーエリュシオン』はどうやらもうひとつのラグナロクを描くようで、初代とは違った時間軸で展開するようである。

オーディンのビジュアルも初代とは異なっているので、レナスとは完全に別世界の話なのかもしれない。

 

ジャンルもアクションRPGとなっており、かなり変化した印象を受けるが、戦闘ではエインフェリアとも連携できるようである。

今のところ公開されたトレーラーを見るかぎり、戦闘に参加できるエインフェリアは1名だけという可能性もある。

 

自分が『ヴァルキリー』シリーズに一番求めているのは魅力的なエインフェリアたちであり、そして彼らの生前の物語を知ることである。

トレーラーを見るかぎり死後の彼らとヴァルキリーが話すシーンも長めに用意されていそうであり、楽しみである。

公式で発表されているエインフェリアは現在2名であるが、トレーラーでは女性キャラクター2人の姿も見え、こちらもエインフェリアなのではないかと思った。

最終的に何名になるのか分からないが、老若男女さまざまに揃っていたら個人的にはうれしい。

これからの発表に期待したい。

 

9月29日にPS4/PS5で発売。PC(Steam)では11月12日発売となる。

 

 

『ハーヴェステラ』

自分で育てた作物で料理ができるのも楽しそうだ

 

最後に『ハーヴェステラ』であるが、こちらは「Nintendo Direct mini ソフトメーカーラインナップ 2022.6.28」にて発表された完全新作ゲームである。

畑を育てたり家畜を飼ったりという牧場シム的な要素があるRPGという感じで、個人的には春夏秋冬があるカラフルな世界観が気になっている。

村人との間に友好度が設定されているというのも面白そうである。

 

しかしこのゲームはただほのぼのしたゲームだというわけではなく、「死季」と呼ばれる少し不穏な要素がスパイスになっているようだ。

季節の変わり目に訪れるこの「死季」の間には人々は外にも出られず、作物も育たないようである。

この設定がどのように活きてくるのか、続報に期待したい。

 

また、相棒的なキャラクターで未来から来たアリアという女性がいるが、「死季」の謎を研究するという目的も相まって、設定だけ聞くとなにやら彼女のほうが主人公のようである。

主人公ならではの見せ所にも注目したい。

 

11月4日にSwitch/PCにて発売予定である。

 

 

最後に

やはりポイントとなるのは、『ディオフィールドクロニクル』と『ヴァルキリーエリュシオン』の発売が1週間ちがいだという点だろう。

どちらをプレイするかが悩みどころである。

個人的には、ずばり「気になるキャラクターがいる方」を優先したい。

『ヴァルキリーエリュシオン』は、自分が重視するエインフェリアについてはまだ多くは明かされていない。

どちらも情報を追いながら、じっくりと秋までに心を決めたい。

 

まずはスクエニ作品第一歩として『春ゆきてレトロチカ』をこの連休中にクリアしたい。

非常に面白く、どんな結末を迎えるのか今から楽しみにしている。

 

スクエニ実写ADV『春ゆきてレトロチカ』中盤あたりまでの感想(ネタバレなし)

ADV好き、ミステリ好きにおすすめ

 

現在、スクウェア・エニックスはサマーセールを行っている。

7月20日までSwitch/PS4/PS5の対象商品をセール価格で買うことができる。

 

このチャンスにかねてより注目していた実写アドベンチャーゲーム『春ゆきてレトロチカ』のSwitch版を30%オフの5,236円で購入してみた。

PS4/PS5版も同じ値段で販売中である。

現在おそらく中盤と思われるところまで進めており、システム面についてはおおよそ把握できた。

本作は、公式がネタバレ禁止をしているため、ストーリーについてはふれずに全体的な印象について語りたい。

 

 

すぐになじめる実写表現

まず、実写作品であることについての感想を述べたい。

自分はこれまで実写のゲームをプレイしたことがなかったため、一体どのような感触になるのか想像がつかなかった。

実際にプレイしてみて、自分でも意外なほどすんなりとこの映像表現になじむことができた。

冒頭から始まるムービーを見るうちに、すぐにTVドラマを視聴しているかのような気分になり、実写ゲームであるということより登場人物や人間関係、舞台設定などを把握することに意識が向いていった。

発売が迫ってから情報をシャットアウトしていたので、ストーリーもあらすじ程度しか知らず、続きが気になって結果的に何時間も続けてプレイしてしまった。

普段ドラマや映画を楽しんでいるという人なら、このムービーパートも同じ感覚で見ることができるだろう。

画面上に表示されるヒントは、特に操作せずとも自動に取得されていくため、ドラマを見ているだけでゲームは進行していくので安心してストーリーを追うことができる。

 

 

迷推理が面白い推理パート

次にシステム面である。

ムービーパートが終わると、主人公のはるかの脳内イメージを具現化した「思考空間」に移動して仮説を組み立て、推理をしていくことになる。

ここは一種のパズルのようになっており、蜂の巣状のステージに謎となるワードが配置されており、その謎の手がかりが書かれたタイルを当てはめていくことで仮説が文章として出来上がる。

こう書くとなにやら複雑そうだが、ヒントとしてタイルには記号も描かれており、同じ記号のところにタイルを配置するだけで仮説は完成するため、時間はかかっても推理パートは必ずクリアできる。

 

ここで組み立てられる仮説は必ずしも正しいわけでなく、中にはかなりトンデモ推理なものもある。

「そんなわけあるかい!」と面白がってツッコミを入れながら見るのがおすすめである。

仮説はどんなものでも大真面目な文章で書かれるため、そのシュールさが癖になること請け合いだ。

ある程度仮説を組み立てると推理パートを終わりにできるのだが、自分は全部の仮説を見てから先に進むようにしていた。

 

 

親切設計な犯人当てパート

いよいよ組み立てた仮説を元に犯人を指摘するパートに入る。

そこまで身構えなくとも、はるかのセリフの流れに沿った選択肢を選んでいけばなんとかなる場面も多い。

間違えても間違えたなりのセリフが用意されており、推理の見直しをして再挑戦することができる。

一度、真面目に選んだのに大ハズレな推理をしてしまった時はかなり面白い展開になったので、二週目以降は積極的にハズレ選択肢を選んで登場人物のリアクションを見ていきたいと思っている。

ただ、ミスをすると章終わりのランク判定が下がってしまう。

最高ランクはSであると思うのだが、今のところAかBしか取れていない。

まだ中盤(おそらく)のため、この判定が後々なにかに関わってくるのかどうかは分からないが、S必須のアンロック要素があったら二周目に持ち越したい。

 

 

まとめ

以上が『春ゆきてレトロチカ』中盤までプレイした感想となる。

ずっと気になっていた作品だったため、セールがいいきっかけとなった。

遊ぶ前はもっと難しいゲームではないかと想像していたのだが、実際は簡単とまではいかないが救済措置も多く、ミステリ好きなら楽しんでプレイできる作品であると感じている。

まだクリアしていないため、ストーリーがどのような結末を迎えるかで印象は変わるかもしれないが、今のところ満足度はかなり高い。

 

このまま楽しみながらクリアを目指していこうと思う。

 

アニメ『シェンムー』第13話感想 さくら色の莎木(シェンムー)

親父……

 

4月から配信していた『Shenmue the Animation』がついに最終話を迎えた。

 

全話イッキ見のチャンス!

複数の動画サービスで配信中だが、現在、一週間無料で視聴できるサイトとしてはニコニコ動画Gyao!がある。

しかもGyao!では全13話を一斉無料配信中である。

7月7日(木)の11:59までが配信期間となっている。

見逃していた人も、第1話から振り返りたい人も、ぜひともこの機会にチェックしてみてもらいたい。

また、検索する際はカタカナではなく『Shenmue』と入力しないとヒットしないという話も耳にしたので、探したのに見つからないという人は『Shenmue』でもう一度試してほしい。

 

また、TV放送も開始されている。

関東ローカルのTOKYO MXにて毎週火曜日19:00より放送中である。

こちらは配信より遅れてスタートしたため第9話が放送されたところだ。

 

第1話から見たかった!という人には朗報がある。

7月7日(木)23:30より、BS日テレで放送が開始されるのである。

視聴環境がある人はぜひ始めから芭月涼の物語を楽しんでほしい。

 

毎週夢中になって見た。まだ終わった実感がわかない

 

本題の第13話の感想に入る前に、アニメ全体について軽く振り返っておく。

見終わって今感じるのは、よくぞ全13話で原作ゲームである『シェンムーⅠ&Ⅱ』の内容を描ききってくれたという称賛と感謝の気持ちである。

 

ゲームの『シェンムー』はイベントシーンよりも自らで涼を操作して探索するアドベンチャーパートがプレイ時間の大半を占めている。

自分が一番時間を費やしたのはおそらく町の人への聞き込みであっただろう。

話題が変わるごとにとにかく人に話しかけ続けた。

本筋とは関係のない世間話を聞くのも楽しく、特に横須賀のドブ板の人たちには本当の知り合いでもあるかのように親しみを抱いている。

自分が現在に至るまで『シェンムー』という作品に思い入れを持ち続けたのは、ストーリーが面白いのはもちろんだが、こういったゲーム部分の体験も大きいと思っていた。

 

そのため、そういったゲーム部分を切り離してストーリーだけを抜き出したアニメがどういったものになるのか見る前は想像がつかなかった。

ただ海外で一足先に公開されており、その評判が良かったため大きな期待を持ってもいた。

 

自分がアニメ配信がスタートする前に書いた記事はこちらである。

 

gameandbooknadonado.hatenablog.com

 

今振り返ると作画についてもストーリーについても、この時に期待した通りの仕上がりになっていた。

そのことがしみじみと嬉しく、半ば奇跡のようにすら感じる。

アニメオリジナルのエピソードが上手に盛り込まれており、ゲームをプレイした人でも続きが気になるよう構成されており、結果として『Shenmue the Animation』は一つのアニメとして高いクオリティの作品となっていたと言えるだろう。

 

令和のこの時代に『シェンムー』をアニメという新たな表現で、ここまで魅せる作品に仕上げてくれた制作陣には本当にありがとうと言いたい。

 

それでは最終話の感想を語っていきたい。

前回の感想はこちらである。

 

gameandbooknadonado.hatenablog.com

 

待ちに待った対決

メインビジュアルにあった藍帝と涼との対決シーンがついに登場した。

藍帝の姿を目にした涼は復讐に燃え、我を忘れて立ち向かっていく。

しかし、まるで歯が立たず軽くいなされてしまう。

だが藍帝が涼を覚えており、その成長を認めているということが分かった。

自分はそのことだけで少し報われたような気分になった。

 

勝負は朱元達の呼びかけによって中断され、決着は着かないまま藍帝はその場を立ち去ることになる。

涼は執念に取り憑かれてその姿を追うが、目的のためには立ち止まるなというレンの言葉で目を覚ます。

「ああ、そうだな。礼を言う」

この時の涼の声はいつもより低く、彼の心が落ち着きを取り戻したことを表しているようで印象的である。

 

 

決まった!外門頂肘

斗牛と対峙した涼は今まで出会ってきた人々のことを思い出し、そして秀瑛が語った明鏡止水の教えを胸に、伝授された外門頂肘で戦いに終止符を打つ。

夕陽をバックに逆光で描かれているこのシーンはとても鮮烈で、BGMのメインテーマアレンジがさらに気持ちを高ぶらせる。

ウォンでなくても「やったあ!」と声を上げたくなるカッコよさ満点の場面である。

 

 

頬の傷はもうさわらない

もしかしてバンソウコウを取る日も来るのかもしれない

 

朱元達から鏡に隠された真実と、藍帝は自分の父を巌に殺されたと思い復讐をしたのだということを聞いた涼。

藍帝が向かったという白鹿村へ行くことを決意するが、レンに頬の傷を触らなくなったことを指摘される。

これを聞いて、これまで藍帝を思い出す度に傷に触れていたことには「復讐」という意味が込められていたのだということがハッキリした。

そしてその気持をもう捨てたのだということが分かる。

 

その後の秀瑛との会話でも、藍帝を追うのかと問われて、

「いえ、俺は真実を追います」

と涼は明言している。

敵討ちを目的としていたゲーム版とは違い、アニメの涼は父の潔白を信じ、そのことを明らかにするために香港を後にするのである。

 

 

ウォンとジョイのその後

 

このままウォンが商売人として成功することを祈ろう

 

まっとうに生きたいと言っていたウォンはその後、バナナの叩き売りを始める。

ジョイは母の墓に父が供えた花があるのを見つけ、久しぶりに家に帰ろうかとつぶやく。

これらはアニメオリジナルのシーンであり、彼らの未来が明るいことを予感させる描写にちょっとほろっと来た。

ところでバナナ売りの客の中に、ズボンの色は違うが徳林さんのようなキャラクターがいたのが気になって仕方ない。

 

 

莎花(シェンファ)との出会い

いつも一緒にいた可愛い子ヤギ

 

桂林へとついた涼は白鹿村に向かう途中、溺れたヤギを助けようとするシェンファを追って川に飛び込む。

ついに『シェンムー』のメインヒロインと涼が出会うのである。

シェンファを助けた後気を失った涼は、目覚めると白鹿村にある彼女の家にいた。

 

そしてここでついにタイトルの由来となる莎木(シェンムー)の木が登場する。

ゲームでこのシーンにたどり着いた時は、鳥肌が立つような感動を覚えた。

薄紅色の花が咲く莎木は自宅の庭の桜の木を思わせ、涼はそこに巌の幻を見る。

そして莎花(シェンファ)は自分の名前は莎木の花のことなのだと説明する。

 

タイトルになった木の花の名前。

このことだけで、彼女が重要なキャラクターであり、そして2人の出会いがまさに運命的なものなのだということが分かる。

 

涼はシェンファの父が持っていた図面に鳳凰鏡が描かれていることに気づき、詳細を聞くために2人で採掘場を訪れる。

そこで壁に彫られた鳳凰鏡と龍鏡を見つけ、「その者、東の遠つ国より」で始まる白鹿村に伝わる詩が読まれ、第1話の冒頭へと繋がる。

この時にこれまで出てきたキャラクターの現在の姿が次々に映し出される。

横須賀編の原崎と貴章が登場したのはうれしいサプライズであった。

 

詩は「長き物語は今、始まれり」で終わり、画面には「The Story Goes On…」の文字が浮かび上がった。

2期の発表はなかったが、少なくとも制作陣は作るつもりがあるのだと自分は受け取った。

 

いつか、必ず

 

つくづく『シェンムー』をアニメ化してくれたことには、本当に感謝しかない。

毎週木曜日が楽しみでしかたないこの数ヶ月だった。

いつの日か『シェンムーⅢ』をアニメで見ることができることを待ち望んでいる。

そしてなにより、ゲーム本編の続きである『シェンムーⅣ』が出る日を心待ちにしている。

 

長き物語の終わりを、必ずこの目で見届けたい。

 

 

アニメ『シェンムー』第12話感想 エレベーターづくしの黄天楼

敵味方関係なくとにかくエレベーターに乗りまくる


春アニメ『シェンムー・ジ・アニメーション』第12話が配信された。

ここでは原作ゲームを最新作『シェンムーⅢ』まで全てクリア済みの自分から見た、アニメ版の感想を語っていこうと思う。

 

第11話の感想はこちら。

 

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ウォンとジョイの決意

冒頭でウォンは涼を助ける理由として、そうすることで自分が変われるかもしれないからだと語った。

 

前回レンが涼に協力してくれている訳についても、同じ説明がされていた。

香港で暮らす上でいろいろなことを諦めざるを得なかった彼らの目には、掟破りな涼はただの常識知らずの外国人ではなく、人生観まで変えるような大きな存在として映っているのだろう。

これはアニメで加えられた説明であり、ゲームでは彼らが涼に協力する理由については特段語られていなかった。

いつの間にか涼が慕われて、付いてきてくれているという印象があった。

 

今改めて考えると、身を投げうってでも涼を助けようとしてくれるからにはそれ相応の覚悟があったはずである。

今回のアニメ版でその経緯が語られ、黄天楼にウォンとジョイがいた理由がようやく分かり、長年の疑問が解けてスッキリした。

 

それにしてもアニメでもゲームでも涼自身は他人に与える影響などまったく気にせず、ただ自分の信念を貫こうとしているだけなのがいっそ清々しいほどである。

 

 

ギャグ要員になり、愛嬌の増したユアン

期待を裏切らないレン

 

ユアンがゲーム版よりもギャグっぽいキャラクターになっているのが印象的だ。

 

特に今回はネズミにパニックになったり、ゴミ箱で脅迫されて百面相を見せたりとコミカルなシーンが多かった。

ゴミを浴びせられエレベーターのドアが閉まった後、甲高い叫び声が段々低い男の声に変わっていくところなどは笑ってしまった。

ゲームプレイ時にはユアンにはキレたら危ないキャラという印象を持っていたので、ここまでギャグ路線に走ったのは意外でもあった。

けれども九龍のアクションに次ぐアクション、という緊迫したストーリーの中ではホッと息をつけるギャグシーンがたしかに必要だったかもしれないと思える。

 

それにしてもアニメ版のユアンはドジを踏んでばかりで、なんだか愛嬌すら感じる。

 

 

最終話に向けて

メインビジュアルの1つにあった涼と藍帝の対決は、次回に持ち越しのようである。

 

最終話で九龍編を終わらせて一気に桂林まで進み、シェンファと出会うのだと考えると、かなりのハイスピード展開になるかもしれない。

とはいえ、これまで毎回ストーリーを凝縮して、さらにアニメオリジナル展開まで入れたハイクオリティなアニメ版シェンムーを見せてくれてきたことを考えると、心配することはないのかもしれない。

ストーリー以外に気になるのはアニメ2期が制作されるか、またゲーム版についてのニュースが出るかなのだが、配信ということを考えるとそもそもそれを報じる枠がない可能性もある。

 

欲張らずに、まずは全力で『Shenmue the Animation』第13話「莎木」を楽しむことにしたい。

 

『ドラゴンズドグマ ダークアリズン』おとぼけ覚者のプレイ日記 その2

ドタバタ冒険活劇 その2


Switch版『ドラゴンズドグマ ダークアリズン』プレイ日記その2をお届けしたい。

前回の記事はこちら。

 

gameandbooknadonado.hatenablog.com

 

進行度としては竜征クエストの『霊廟に響く呪詛』をクリアしたところである。

いや~、面白い。

セールで990円(現在は4063円)という驚きの低価格で買ったことが申し訳ないほど、楽しませてもらっている。

Xbox One/Steamではまだセール中なので、プレイ環境が揃っている人はぜひチェックしてみてもらいたい。

 

さて、この「おとぼけ覚者のプレイ日記」では初見プレイの感想をネタバレありでつづっていく。

『霊廟に響く呪詛』をまだクリアしていない人や本作未プレイの人は注意してもらいたい。

 

 

オンラインにつなげてみた

世界中のプレイヤーとつながっているかと思うと感慨深い

 

本作のオンライン要素としてプレイヤー同士でのポーンの貸し借りがあるが、自分はSwitchオンラインに加入していないので無関係だと思っていた。

しかし、調べてみるとサービス未加入でもこの要素を楽しめることが分かり、さっそくオンラインへとつなげてみた。

ポーンギルドに行き、リムへと入り、「月間人気ランキング」を選択してみる。

上位5人を選び、ポーンが出てくるのを待つ。

霧の中からポーンが現れるこの瞬間はいつもドキドキする。

 

ゆっくりと歩いてきたのはいかにも「歴戦の猛者」といった風貌の男性ポーンだった。

『ウィッチャー』のゲラルトを若くしたような感じだ。

装備も豪華である。

どれどれ…

 

レベル、∞(無限大)。

必要コストが700万リム以上。

 

目を疑う数字が叩き出されている。

ちなみに自分は今、レベル18であり、所持しているリムは500くらいである。

リムは理解できるが、レベルの上限がいくつなのか知らないため「∞」については「とにかくすごい」ということだけしか分からなかった。

 

「詳しく見る」でステータスを確認してみるが、正直、まだ見方を理解していないため「たぶんすごいんだろうな」という感想しか浮かんでこなかった。

星が沢山ついているのは、そのスキルを極めているという意味だということは分かるが、そもそもそのスキルがどのくらい強力なのかが分からないという有様である。

すごさに圧倒、というかすごさの分からなさに圧倒されてその場に立ち尽くした。

 

どういうことなんだ……

 

それにしても、このレベル∞の最強ポーンを手塩にかけて育て上げたプレイヤーの情熱に思いを馳せずにはいられない。

どれだけの時間をこのポーンと過ごしたのだろう。

外見がどれだけ強そうであっても、どのポーンも初めはレベル一桁からのスタートだ。

プレイヤーキャラクターとともに戦う中で強く、賢くなっていく(らしい)。

人気ランキングに登場するほど役に立つポーンともなれば、いったいどれだけの死線を覚者たるプレイヤーとともにくぐり抜けて来たのか想像もつかない。

 

いつかは自分のメインポーンも人の役に立つ日が来るのだろうか。

高評価をもらい、プレゼントとリムを持ち帰るポーンを誇らしい気持ちで迎えることはあるのだろうか。

そんな日を目指して、とりあえず今は目の前のクエストを一つずつこなしていこう。

 

駆け出し覚者としてそう心に誓い、星ばかり並んだキラキラしいステータスの残像にクラクラしながらリムを出た。

 

 

 

メインポーンのサボりが発覚

乱戦の中をふらつくポーン

 

なんということだろうか。

あろうことか、覚者たる自分を支えてくれるはずのメインポーンが戦闘をサボっていることが分かった。

 

エスト『霊廟に響く呪詛』は地下墓所が舞台となっており、アンデッドがわんさか出てくる。

この魔物たちは耐久力がやけに高く、何度も何度も斬りつけてようやく倒すことができる。

自分はマジックアーチャーにジョブチェンジしたのだが、実は魔法の使い方を未だ理解していないため、ダガーでひたすら攻撃を繰り返していた。

メインポーンがソーサラーであるため、魔法攻撃と回復は完全にそちらに任せていた。

 

アンデッドは次々に出てくる。

戦闘は長引きがちで、消耗も激しかった。

全力を出しきらないとこのクエストはこなせない、そう思っていた。

 

ゾンビ山盛り。さすが『バイオハザード』のカプコンのゲームなだけある

 

何度目かのアンデッドの群れに襲われた際、自分は「それ」を目撃した。

自分は戦闘中は基本、ポーンたちのことは見ていない。

目の前の敵を倒すことに集中している。

その時もゾンビを必死で斬っていた。

 

不意に、画面の端からメインポーンが登場した。

ゆっくりと近づいてきて、ゾンビを挟む形で自分の向いに立った。

助太刀か、ありがたい。

そう思った。

しかし、ポーンは一向に攻撃する気配を見せなかった。

ただその場に立ち尽くし、ぼんやりと自分の死闘を眺めている。

そしてしばらくすると気が済んだかのようにまたゆっくりと画面の端に消えていった。

 

なんだ今のは!?

 

戦闘が終了すると、ポーンたちは自分のまわりに集まってきた。

メインポーンも何事もなかったかのような顔でその輪に加わっている。

 

先ほどの出来事について、考えてみた。

頭に浮かんだのは、椅子に座って行うポーンとの語らいの時に出る質問に、

 

・安全を優先して行動する

・ポーンたちを助け支える

 

という行動方針についての二択があったことである。

自分は、常に上の選択肢をえらんでいた。

パーティー全員の安全を優先する、という意味合いに受け取っていたのだが、もしかするとこれは(メインポーン自身の)安全を優先するということだったのかもしれない。

 

それが原因なのか、すぐにでも宿屋に戻って行動方針を変更して確かめたいところだったが、その時にはすでに地下墓所をかなり進んでいた状況だった。

とりあえずこのクエスト内ではメインポーンのサボりを容認し、その分まで戦うしかない。

そう決意し、先へ進むことにした。

 

 

ヒトダマでテンションUP↑↑

心躍るヒトダマ戦。うれしいサプライズだ

 

地下墓所は基本ゾンビだらけだったのだが、ある場所ではヒトダマが出現した。

「タマシイが浮かんでいます!」

ポーンが声を上げる。

白い霧の渦のような形をしたヒトダマが、暗闇の中で発光していた。

新しい敵の出現に、とまどいと同時にワクワク感がわき起こった。

 

すぐさま走り出し、真っ先にヒトダマに斬りつける。

手応えなし。

スウッと交わされたあげく、そのままどこかに逃げられてしまった。

 

よく分からないものは後回しにするしかない。

同時に出てきたゾンビをいつものようにザクザク斬っていくことにした。

すると切迫したポーンの声があがった。

「ヒトダマに捕まりました!攻撃すれば解放されます!」

見れば、メインポーンがヒトダマにくるまれるようにして拘束され、もがいていた。

すぐさま駆けつけ、一太刀を浴びせる。

解放されるポーン。

どこかへ飛んでいくヒトダマ。

 

次は自分がヒトダマに取り憑かれた。

ジタバタしていると「覚者様!すぐに助けます!」とメインポーンが走り寄ってくる。

先ほどまで戦闘をサボっていたのが嘘のように頼りになる相棒感を出している。

攻撃、解放。

なにこれ面白い!!

 

覚者とポーンのタッグは最強!本クエスト最大の見せ場

 

ポーンを助けるのも、助けられるのもドラマティックで盛り上がる。

しかも一回攻撃するだけで離れていくので、そこまで手間でもない。

大写しになったポーンも見られるし、ヒトダマってすごいお得な敵じゃないか?とテンションがあがってきた。

その後も何度かメインポーンが捕まり、嬉々として駆けつけるということを繰り返した。

 

そして気がつけばゾンビも、いつの間にかヒトダマもいなくなっていた。

静まり返った地下墓所

祭りの後のような寂しさを感じた。

また出てくるかもしれない…そう自分に言い聞かせ、その場を後にした。

 

しかし、その後ヒトダマは一切出てこなかった。

あの場所限定の敵なのか、墓所的な他のダンジョンにも出てくるのか分からないが、またいつか出会う日まで、楽しかった思い出を胸にしまっておこうと思う。

 

 

ご決断を!

エスト『霊廟に響く呪詛』では、なんとラストでプレイヤーに重要な決断を迫ってくる。

邪教 " 救済 " の幹部を、生かすか殺すかの選択が出てくるのである。

このクエストで協力してくれたキャラクター、メイソンは覚者に判断をゆだねてその場を立ち去る。

 

幹部は命乞いをし言い訳を並べ立てるのだが、これが予想以上に長く続く。

ここまでセリフが用意されているなら聞かないともったいないと思い、自分は幹部の話に最後まで付き合った。

 

幹部はやがて気力が尽きたのかのように黙り込み、頭を抱えてその場にうずくまった。

静寂が辺りを包んだ。

ポーンの言葉が響きわたる。

「私は覚者様の決断に従います」

ここまであらゆるヒントをくれたポーンが、今は突き放すかのようにそれだけを繰り返す。

冷静な口調からは、この場面における正解がどちらかなのか読み取れない。

だが、自分の心は初めからもう決まっていた。

 

ゲームの決断シーンはアツい。この先も出てくるのか

 

きびすを返し、その場を後にした。

幹部は小者のようだから、生かしておいても害はないと判断したのである。

「私は覚者様の決断に従います」

同じセリフなのに、今は自分の行動に同意しているかのように聞こえてくるから不思議だ。

それに勇気づけられ、自分の選択に間違いはなかったと確信しながら、晴れやかな気分で足を進めていると、

 

「ギャアアアアア」

突然男の叫び声が響き渡った。そこにメイソンの声が続く。

「甘いですね、覚者様」

メイソンが幹部を始末したのだ。

 

正直、この展開は予想していなかった。

動揺しながらも全力で走り出した。

もう手遅れなことは分かっているが、それでも駆けつけなければと思ったのだ。

脳裏には「なぜ殺した!」とメイソンに詰め寄る自分の姿を思い描いていた。

 

走る、走る。

……

なかなか着かない。

もしかして逆に進んでしまったのではないかと思い、引き返す。

そして走る。

……

……

認めるしか無い。

自分は、迷子になっている!

 

こんなに盛り上がっているシーンで、まさかの迷子

 

いつまで経ってもあの幹部がいる場所にたどり着けなかった。

それどころか見覚えのないところへ来てしまった。

「これで良かったのです、あの男とこれ以上関わり合いになるべきではありませんでした」

メインポーンは穏やかな口調で、幹部の死についてなぐさめてくれる。

その気持はうれしいが、それよりもいったいここはどこ?

 

今なら分かる。マップを見ればよかったということを。

しかし、その時の自分は幹部の死に動揺しており、そんな簡単なことすら思い浮かばなかったのである。

 

しばらく辺りをさまよっていると、突きあたりに上に伸びる長いはしごがあるのを見つけた。

ここでまた引き返したらこのはしごを見失ってしまうかもしれない。

とりあえず上を確認するだけしてみよう。

そう思い、おもむろにはしごを上った。

 

上の階に繋がっているかと思いきや、いきなり外へ出た。

明るい日差しの中、草原と流れる川、そして頭上にかかる小さな橋が目に飛び込んできた。

すぐ近くに領都が見える。

信者たちが魔物だらけの中、どうやってあの場所まで来ていたのか気になっていたのだが、このショートカットルートを使っていたということなのだろう。

 

狭く暗いゾンビだらけの地下場所を抜けていったん陽光の下で開放感を味わってしまうと、またあそこに戻ろうという気にはなれなかった。

幹部のところへ駆けつけなければという使命感も、次第に薄れていく。

義憤に燃えてメイソンに詰め寄る覚者、というあるのか分からない熱いシーンも幻となって消えていった。

 

よし、マクシミリアン隊長にクエスト達成を報告に行こう!

未練を断ち切って大きく足を踏み出し、領都へ向けて全力で走り出した。

 

 

方向オンチの覚者の旅はまだまだ続く。